研究課題/領域番号 |
21K14610
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
福井 智也 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (40808838)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 結晶化 / 自己集合 / 金属錯体 / ブロック構造体 / スピンクロスオーバー |
研究実績の概要 |
結晶は、構成分子の位置や配向が完全に規定された集合体である。結晶状態においては構造-物性相関が明確であり、分子に秘められた機能をバルク状態で発揮することが可能である。申請者は、結晶を一つの分子集合体のコンパートメントと見なし、異種の結晶の階層的集積化により、シームレスなヘテロ接合界面を有する一つの構造体を構築できれば、単一成分の結晶では見られない協同的な機能を発現できるのではないかと考えた。そこで本研究では、有機合成に基づく緻密な配位子の設計性と金属イオンの優れた機能をあわせ持つ金属錯体をターゲットとし、「core-shell block co-crystal」の創製とそのシナジー機能を探求する。具体的には、(1)異種錯体分子の結晶同士がヘテロ接合した core-shell block co-crystal の精密作製法の確立と (2)分子構造の異なる錯体分子の結晶同士がヘテロ接合した core-shell block co-crystal の創製を通じ、(3)core-shell block co-crystal のシナジー機能、特に協同的スピン転移現象を発現する系の構築を目指す。 2021年度は、カルボキシ基もしくはアミド基を水素結合性ユニットとして導入したビスピラゾリルピリジン誘導体を配位子とする鉄、コバルト、亜鉛錯体の逐次的結晶化による core-shell block co-crystal の構築に取り組んだ。また、配位子の構造が類似した異種金属錯体同士を逐次的に結晶化することで、分子構造の異なる金属錯体分子の結晶同士がヘテロ接合した core-shell block co-crystal の作製にも成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、(1)異種錯体分子の結晶同士がヘテロ接合した core-shell block co-crystal の精密作製法の確立と、(2)分子構造の異なる錯体分子の結晶同士がヘテロ接合した core-shell block co-crystal の創製に集中的に取り組んだ。その結果、カルボキシ基もしくはアミド基を水素結合性ユニットとして導入したビスピラゾリルピリジン誘導体を配位子とする鉄、コバルト、亜鉛錯体を逐次的に結晶化することによって、 core-shell block co-crystal の構築に成功した。さらに、配位子の構造が類似した異種金属錯体を逐次的に結晶化することにより、分子構造の異なる錯体分子の結晶同士がヘテロ接合した core-shell block co-crystal にも成功した。これらの core-shell block co-crystal の構造は、単結晶X線構造解析により明らかにしている。また、MPMSを用いた core-shell block co-crystal の磁気的物性の評価についてもすでに開始している。以上から、現在まで研究は順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの検討により、種結晶を用いた異種金属錯体の逐次的結晶化により、core-shell block co-crystal の構築が可能であると明らかになっている。2022年度は、(2) 分子構造の異なる錯体分子の結晶同士がヘテロ接合した core-shell block co-crystal の創製、ならびに、(3) core-shell block co-crystal のシナジー機能の評価に集中的に取り組むことを計画している。(2)については、カルボキシ基もしくはアミド基を修飾したビスピラゾリルピリジンを配位子とする異種金属錯体の逐次的結晶化により core-shell block co-crystal の構築を行う。これにより、コアとシェルで異なるスピン転移挙動を示す一つの構造体を構築することが可能であると考えている。得られた core-shell block co-crystal における錯体分子の集合構造については単結晶X線回折測定により評価する。この時、結晶成長が面選択的に起こるのか、もしくは面選択性を示さず結晶化するのか詳細に検討することで、block co-crystal の構造制御に向けた結晶学的な知見が得られると考えている。さらに、core-shell block co-crystal のスピンクロスオーバー挙動については、MPMSを用いた磁気測定や顕微Raman、IR測定を駆使して多角的に評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2021年度において、参加予定であった学会発表が新型コロナウイルス感染症対策により全てオンライン開催となったため、当初計上していた旅費を使用しなかった。また、core-shell block co-crystalの作製に用いた配位子ならびに金属錯体の合成、キャラクタリゼーション、単結晶X線構造解析等が予想以上にスムーズに進行したため、当初計上した物品費、その他の経費よりも効率的に予算を使用することができた。以上の理由により次年度使用額が生じた。2022年度は、core-shell block co-crystalの物性評価のため、大学の共通設備であるMPMSやPPMSなど、高価なヘリウムを大量に使用する測定を数多く行うことを予定している。したがって、次年度使用額の大部分は共通設備の使用料として計上する。また、2021年度は配位子合成に係る予算を非常に効率的に使用することができたことから、今年度検討に用いる配位子のライブラリーを当初の計画よりも充実させるために、配位子合成に必要な試薬の購入費として計上する。
|