研究実績の概要 |
当該年度は、アニオン性配位子であるシクロペンタジエニルを用いた「シクロペンタジエニル (Cp) ロジウム (Rh) 錯体」に着目した。 本錯体は、配向基を有する芳香環の C-H 結合を選択的にメタル化し多様な官能基へと変換できる有用な触媒であり、炭素・酸素・窒素などの電気陰性元素の導入反応に用いられてきたものの、ホウ素などの電気陽性元素の導入反応には用いられてこなかった。そこで、反応中間体であるアリールロジウム(III) を直接光励起させ、Lewis塩基性の高いアリールロジウム(II)アニオン性錯体へと変換することができれば、Lewis酸性を有するジボロン (B-B) 試薬と強く相互作用でき、ホウ素化反応が促進されるのではないかと考えた。 触媒配位子や配向基を検討した結果、塩基性配向基を有する基質を用いた場合に、アリールロジウム(III) 中間体を効率よく励起三重項状態へと変換できることを見出した。この現象を用いてホウ素化反応を検討した結果、「塩基性配向基に特異的な芳香環のオルト位C-H ホウ素化反応」が可視光照射下でのみ選択的に進行することを見出した。実験化学的手法と理論計算による解析の結果、本反応はラジカル種を介すことなく、ロジウム中心の還元によって反応が促進されていることを明らかにした。 本研究成果は、以下の学術雑誌に掲載された。J. Tanaka, Y. Nagashima,* A. J. Araujo Dias, K. Tanaka* Photo-Induced Ortho-C-H Borylation of Arenes through In Situ Generation of Rhodium(II) Ate Complex. J. Am. Chem. Soc. 2021, 143, 11325-11331.
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