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2021 年度 実施状況報告書

光励起分子内一電子移動反応を利用した直接的水素原子移動(HAT)触媒の開発

研究課題

研究課題/領域番号 21K14625
研究機関名古屋大学

研究代表者

荒巻 吉孝  名古屋大学, 工学研究科, 助教 (70779678)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード光触媒 / 一電子還元 / 水素原子引き抜き
研究実績の概要

分子内光誘起一電子移動型分子が多機能光触媒として機能することを実証するため、ドナー部位としてチオール、フェノール、アミド部位をもつトリアリールボラン誘導体をそれぞれ合成した。このうちチオール誘導体においては脱プロトン化したアニオン状態において光照射を受けると水素原子引き抜き能と一電子還元能を同時に有するラジカルペアが発生し、これらがそれぞれ独自に触媒として機能することでラジカルーラジカルカップリング反応を進行させることを見出した。またこのアニオン状態の光物性測定と理論計算によっても想定通り分子内電化移動型の電子移動が起こり、上記のラジカルペアが発生していることを物理化学の面からも実証した。更には理論計算によりボリルチオフェノールがブレンスッテッド酸として機能するほど高い酸性度を有するという知見も得た。これはボリルチオフェノールが一分子でブレンステッド酸触媒、水素原子引き抜き触媒、一電子還元触媒の三機能を同時に有する前例のないユニークな触媒としての可能性を示唆するものであり、実際の触媒反応においても酸による活性化を経ないと一電子還元が困難な基質においても還元反応が進行し、水素原子引き抜き反応により発生したラジカル中間体とのラジカル-ラジカルカップリング生成物が得られ、その三機能触媒としての働きを実証した。
一方、フェノール、アミド型の分子についてはまだ多機能光触媒としての機能を合成化学の面からは見いだせていないが、合成した分子のそれぞれの光物性測定と理論計算からはアニオン状態においていずれの分子においても分子内電荷移動により多機能光触媒として機能しうる可能性を見出しており、今後の触媒構造の更なる改良により光触媒としての機能が期待できる結果を得た。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初年度で計画していた触媒の合成が順調に進み、想定通りの多機能光触媒としての機能を見出しているため上記の評価とした。特にチオール型の触媒においては当初想定していた機能に加え、ブレンステッド酸としての機能も見出すことができこの触媒の可能性を大きく拡げる重要な知見を得られたと考えている。また、その他の分子についても触媒機能を見出すまでには至っていないが、多くの誘導体合成が可能な合成ルートの確立が出来ており、この合成法を軸とした分子構造の最適化により触媒機能発現に向けての基礎が構築出来たと評価している。

今後の研究の推進方策

合成したボリルチオフェノール触媒を用いた独自の反応開発を目指す。具体的にはニッケルやコバルトといった遷移金属触媒、エナミンやリン酸等の有機触媒とのハイブリッド触媒系も視野に入れつつ、活性ラジカル発生に外部酸化剤が不要である点や酸性条件下でも水素原子引き抜き触媒として機能するという本触媒系の特徴を活かした新反応開発を目指す。
ボリルチオフェノール触媒系以外の触媒系への本触媒設計指針の拡張を目指し、ドナー部位としてのアミデートやチオアミデートをもつ分子の触媒機能の探索・活性評価も行う。また電子受容性部位としてのホウ素以外の置換基の可能性についても検証を行い、本触媒設計概念の一般化を目指すとともにこれまでに発現できた機能の他にも様々な機能を有する多様な多機能光触媒の創出を目指す。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルスの影響により研究に必要な重溶媒等の一部の試薬の調達が難しくなってしまったため。本年度は繰越額を消耗品に充てるのに加え、昨年度自粛していた学外研究機関での光物性測定のための出張旅費に充当する計画である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 電子不足トリアリールボランの光励起一電子酸化触媒としての機能開拓2022

    • 著者名/発表者名
      内田裕貴、石川稜、荒巻吉孝、大井貴史
    • 学会等名
      日本化学会第102春季年会

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公開日: 2022-12-28  

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