研究課題/領域番号 |
21K14634
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
齋藤 弘明 日本大学, 薬学部, 講師 (30385976)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アンモニア / カルベン挿入 / 非天然アミノ酸 / ペプチド |
研究実績の概要 |
含窒素化合物は医薬品分子をはじめとして生物活性をもつことが多く、簡便な合成法の開発は有機合成化学上重要な課題である。特に、炭素-窒素結合の構築法の開発研究は、生物活性分子の骨格そのものの構築が可能であることから創薬研究においても高い意義をもつ。そこで本研究では、カルベンを中間体とする窒素含有化合物の効率的な合成法の開発を目的として、100円/kg程と安価で入手が容易なアンモニア分子のカルベン反応における利用の可能性を検証する。 申請者はこれまでに、炭素-窒素結合形成法として有望なカルベンが、芳香族あるいは脂肪族アミンの窒素-水素(N-H)結合に対して効率的に挿入することを明らかにしている。初年度にあたる2021年度においては、1) 有効に機能する遷移金属触媒を見出すこと 2) 環境負荷の低減が期待できる水中での反応系の検証を中心に実験を行った。その結果、鉄-ポルフィリン型触媒を利用するとき、アンモニアを用いるカルベンN-H挿入反応において、カルベンの前駆体であるジアゾ化合物に幅広く対応可能である知見を得た。一方、反応収率に完全の余地が大きいため、次年度以降収率の改善のために引き続きさらに良い反応系の開発研究を実施する。水中での反応実施においてはアンモニア水を用いて検討を行ったものの、こちらでは目的とするN-H挿入体は現在までに得られていない。 今後は、鉄-ポルフィリン型触媒の設計・合成とともに、光反応条件および熱分解条件を併用することにより高収率で目的とするアミノ酸類を得ることができる反応条件の検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で検討する内容に従い、主にカルベン前駆体の構造がアンモニアのN-H挿入反応に及ぼす影響を検討した。アンモニアを窒素源とするN-H挿入反応では、触媒による分解が比較的され難いフェニルジアゾ酢酸エステル類を用いた報告はされていない反応系である。我々は、実験を進める過程において種々の遷移金属触媒を用いて検討したところFe錯体が本反応系において有効に機能する結果を得た。 本触媒およびそのアナログを用いて検証したところ、数%程度の低収率であるがアンモニア分子が直接カルベン炭素に挿入した目的物が得られることがわかった。次に、アンモニア水中におけるカルベン反応の実現可能性の検証を目的としてアンモニア水中におけるカルベン挿入反応を検討した。水中での化学反応は環境負荷低減の観点から理想的なものである。現在までの検討では、アンモニア水あるいはアンモニア水および有機溶媒の二層系において目的とするN-H挿入体は得ることができていない。アンモニア水中のアンモニア分子において、窒素原子上のローンペアは一部プロトン化されていることが考えられ、カルベン炭素に対する求核性が低下していると考察される。
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今後の研究の推進方策 |
アンモニア分子のカルベン炭素への挿入を目的として検討を進める中で、鉄-ポルフィリン錯体の有効性が明らかとなった。我々が実験で用いている基質の化学的な安定性を鑑みて光照射条件を組み合わせた検討も行う。本N-H挿入反応が50%程度の化学収率で進行する条件を見出した後に、有機触媒を組み合わせた反応の不斉化を検討する。
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