本研究は、アンモニア分子をカルベンに直接導入可能は方法論の開発を目的とする。これまでの研究から、数%の収率ながらアンモニアがカルベン炭素に直接挿入したα-アミノ酸構造を有する化合物の生成を確認することができた。本年度の研究は、より高効率化を指向した錯体機能の修飾、水溶化錯体の合成と、アンモニアおよびアンモニア等価体を利用することによるアミノ酸類の直接的合成を見出す検証を行った。 まず、二核ロジウム錯体の特徴である二つのロジウム原子の一方に固相担体を配位した触媒を調製した。単体としては順相シリカゲルと共に逆相シリカゲルおよびアルミナを担体として計20種類の固相触媒を調製した。併せて、水溶性の向上を目的として糖の部分構造を模した高極性二価ロジウム錯体を合成したところ水に対して高い溶解性をもつ錯体の調製に成功した。この錯体は、複数のヒドロキシ基を有しておりまたキラル炭素も構造に含む。今後キラル錯体としての利用も想定できるものであり、カルベン、あるいはナイトレンの不斉挿入反応に展開できる可能性も高い。 また、既報の高極性ロジウム錯体をベースとした反応系のカルベン反応への応用を検証した。ロジウム金属にトリピリジン型リガンドを有する高極性錯体を調製し、この錯体がカルベン前駆体のジアゾ化合物(フェニルジアゾアセテートとジアゾエステル)を分解できることを確認した。さらに、ある種の界面活性作用をもつ添加剤共存下において、より効率的にカルベン挿入反応が進行することを実験的に確認した。 窒素源として脂肪族アミンを利用する際においてロジウム、銅、鉄錯体を中心に検証を実施した。同時に、無触媒反応系において挿入反応が進行する現象も確認することもできた。
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