研究課題/領域番号 |
21K14636
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
草野 修平 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 研究員 (80759291)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | グリコシル化 / 有機ホウ素触媒 / 無保護糖 / 分子認識 |
研究実績の概要 |
糖鎖の生物学的重要性が見出されるとともに,糖鎖研究の注目度が高まりつつあり,同時に研究材料である糖鎖試料の需要が増している.生物試料由来の糖鎖は配列や分岐構造に不均一性を持つため,化学的に均一構造を持つ化学合成糖鎖の需要が特に増している.現行の糖鎖合成法は,反応の位置選択性と立体選択性を制御するために保護糖を利用しているが,保護基の脱着に起因する合成工程の多段階化は,合成効率の低下を招く大きな課題であった.保護基に依存した従来の糖鎖合成法の低い合成効率の改善に向けて,本研究では,無保護の糖同士を位置選択的かつ立体選択的に連結する無保護糖のグリコシル化の開発を目指す. 研究ステップの第一段階として.無保護の糖受容体を高い位置選択性で化学修飾できる触媒の開発から着手した.水酸基の認識と活性化に優れる有機ホウ素触媒上に,求電子試薬(糖受容体モデル)を活性化する官能基を導入した二機能性触媒を新たに開発して,その機能評価を行なった.量子化学計算の手法を取り入れながら触媒構造の検討を重ねることで,有機ホウ素触媒単体よりも遥かに優れる位置選択性を示す触媒の開発に成功した.その反応選択性は,これまでに報告されている無保護糖の修飾触媒よりも圧倒的に優れるものであった.加えて,本触媒がいかにして優れた触媒機能を発揮するのか,そのメカニズム解析を実施した.その結果,当初の設計通り,二つの機能が協働して上手く反応を進行させていることが明らかとなった.本研究を遂行する上での技術基盤となる触媒の開発に成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
無保護のグリコシル化反応の開発に向けて,無保護の糖受容体と糖供与体をそれぞれ位置選択的かつ立体選択的に活性化できる触媒系の構築を計画している.その第一ステップである無保護の糖供与体の反応位置を精密制御できる触媒の開発に成功したため,研究がおおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
本年度開発した触媒をベースに,無保護糖のグリコシル化の検討を進める.まず,糖供与体の保護体をモデル基質とする簡素化された系において,グリコシル化の位置選択性と立体選択性の評価を進める.得られたデータは,触媒構造の再設計へとフィードバックし,無保護糖のグリコシル化に適した触媒開発へ効果的に繋げる.最適化された触媒を用いて,無保護糖同士のグリコシル化の検討へと研究ステージを移行する.
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