研究実績の概要 |
多孔性イオン結晶(Porous Ionic Crystals: PICs)はアニオン性の金属酸化物クラスターであるポリオキソメタレート(Polyoxometalate: POM)とマクロカチオン(カチオン性の多核金属錯体、金属酸化物クラスター等)からなる多孔性材料である。本課題では、PICsとナノ金属を組み合わせることで、革新的な機能性を創出することを目的としている。 それに先立ち、本年度ではPICsの分子設計に立脚した物性・機能の獲得を目指した。主要な研究結果として、下記三点の知見を見出すことができた。 (1)PICを構成するPOMが有するW元素をNb元素に置換すると、Nbと結合した酸素原子の負電荷が増大し、その結果として、塩基触媒反応の一種であるKnoevenagel縮合に対して高い触媒機能を示すこと(Nanoscale, 2021, 13, 18451)。 (2)マクロカチオンとしてAl13核クラスター(Al13O4(OH)24(H2O)12]7+)を有するPICsは酸触媒反応の一種であるPinacol転位に対して触媒活性を示すこと。さらに、Al13核クラスターの構造異性体の制御(ε-Keggin型からδ-Keggin型への構造制御)により、その酸触媒機能は向上すること(Chem. Commun., 2021, 57, 8893)。 (3)POM単体では触媒活性の乏しいCoを内包したPOMをCr3核錯体カチオンと複合化させてPICsを構築すると、電気化学的な酸素発生反応(Oxygen Evolution Reaction: OER)に対する触媒機能を示すようになること。また、この相乗的な触媒機能の発現には、Cr3核錯体カチオンからCo内包POMへの電子供与が重要な役割を果たすこと (J. Am. Chem. Soc. 2022, 144, 7, 2980)。
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