研究実績の概要 |
多孔性イオン結晶(Porous Ionic Crystal: PIC)はアニオン性の金属酸化物クラスターであるポリオキソメタレート(Polyoxometalate: POM)とマクロカチオン(カチオン性の多核金属錯体、金属酸化物クラスター等)からなる多孔性材料である。本課題では、PIC単体および、PICとナノ金属からなるナノ複合物質を基盤とした機能性材料の創出を行った。主要な研究結果として、下記三点の知見を見出すことができた。 (1)PICは酸触媒機能(Pinacol転位; Chem. Commun., 2021, 57, 8893, アセタール化; Chem. Commun., 2022,58, 12548)や塩基触媒機能(Knoevenagel縮合; Nanoscale, 2021, 13, 18451, Dalton Trans., 2022,51, 8186)、電極触媒機能(OER; J. Am. Chem. Soc. 2022, 144, 7, 2980)を付与する設計が可能であること。 (2)レドックス活性なPICを鋳型とし、PICを構成するPOMから銀イオンへの電子移動を利用することで、小核銀クラスターを合成できること。さらに、POMから銀イオンへの電子移動量の制御により、銀クラスターのサイズ制御(3~6核)およびサイズに依存した発光特性の発現(サイズに応じて赤~青の発光色)が可能になること(Small, 2023, 2300743)。 (3)Pdナノ粒子をレドックス活性なPICで被覆するとPdとPICとの間で電子移動が誘起され (日本化学会第103春季年会)、Pdの電子状態の変化に起因した触媒機能や水素吸蔵特性への展開が将来的に期待できること。
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