研究課題/領域番号 |
21K14641
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
竹澤 浩気 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (60813897)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 自己組織化 / 分子認識 / イオン認識 / ランタノイド / ホスト-ゲスト |
研究実績の概要 |
前年度までに開発した三脚型の蓋状イオンを用いて、中空錯体と組み合わせることでこれまでに観測・合成が困難だった種類の金属錯体を合成した。例えば、ランタノイドイオンに対し有機配位子が3つ特定の方向から配位したキラル錯体を中空錯体内で合成することができた。その構造は単結晶構造解析により明瞭に観測することができた。結晶構造中、金属イオンが蓋状イオンとの相互作用を介して中空錯体開口部に固定化される一方、有機配位子は中空錯体の疎水空孔によってその位置や配位方向が定まり、これら複合的な効果によって錯体の構造が特異で一義的な構造へと制御されていることがわかった。さらに、こうして得られた錯体のうちいくつかは、結晶化の際に自然分掌が起こり、一つの単結晶中では単一のキラリティをもつ錯体のみが存在することもわかった。この珍しい現象には多数の構成成分がひとつの構造体を作るという本系の特徴が影響していると考えられる。 更に、蓋状イオンのイオン部をスルホナートからホスホナートとし、合計の電荷を-3から-6にすることで中空錯体との相互作用を強めることができた。これにより正電荷をもつ金属錯体を配位させても十分な相互作用の強さを保つ"蓋状アタッチメント"を実現できた。 また、反応探索においては、蓋状イオンの作用によって中空錯体開口部に配置された金属イオンが、ルイス酸触媒として機能することがわかった。一部のDiels-Alder反応において、中空錯体・蓋状イオン・金属イオンがすべて存在する条件下でのみ加速効果が見られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していたように、蓋状イオンを用いて金属イオンを中空錯体開口部に配置する"蓋状アタッチメント"とも呼べる系を構築することができた。また、その金属イオンによって一部の有機反応が触媒されることも発見した。一方で、構造の同定に想定以上の時間を要したことから、当初狙っていた特異な選択性を示す反応の実現には至っていない。
|
今後の研究の推進方策 |
構築できた系をもとに、特異反応の探索を引き続き行う。特に反応加速のみにとどまらない、サイト選択性や立体選択性をも変化させられる系を構築する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究遂行に想定上に時間を要したため、次の段階での使用を予定していた試薬代、器具代、成果発表費用が未使用となり、次年度に計上する必要が生じた。予定を後ろ倒しにし、また成果がまとまった時点で論文出版費や学会参加費として用いる。
|