研究課題
R4年度には、R3年度に開発されたモリブデン錯体「(PNNP)Mo」を用いた二酸化炭素(CO2)の光還元反応における反応機構の調査を行った。特にMo錯体の配位子が光反応の条件において脱離する可能性をDFT計算によって調べた。紫外可視吸収スペクトルの測定の結果から、構造変化は犠牲剤(1,3-dimethyl-2-phenyl-2,3-dihydro-1H-benzo[d]imidazole)による還元的消光の後に起こると考えられるため、Mo錯体の一電子還元種について調査を行った。今回開発したMo錯体はH、NCS、及びCOの三つの配位子を有している。ヒドリド配位子はギ酸生成の中間体に重要であるので、NCS及びCOの二つの配位子についてその脱離に必要なエネルギーを求めた。その結果、一電子還元種が光エネルギーを吸収し四重項励起状態となった際、CO配位子とNCS配位子のどちらもエネルギー障壁なしで脱離することがわかった。その脱離反応のギブズエネルギー変化を比べるとNCS配位子が脱離する反応の方が有利であり、より進行しやすいことが予想される。続いて、実験的に得られた活性種の紫外可視吸収スペクトルをDFT計算で得られるものと比較することで、実際に脱離しうる配位子を調査した。以上の実験から、Mo錯体のCO2光還元反応に対する活性及びその反応機構を想定した。一方、このMo錯体は頑健なPNNP型四座配位子の立体効果によって反応中では高い耐久性を示したが、空気下では不安定なことが課題点として残っていた。そのため、今回5d遷移金属の中でも比較的安価なタングステン(W)とPNNP型配位子からなる新規W錯体を開発した。この錯体を可視光照射下でCO2の還元に用いたところ自己増感型光触媒として機能することを見出した。その反応機構を分光分析により詳細に調査した。
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