金属材料の製造過程中に生成する介在物の解析のような、高空間分解能化、広視野化、短時間化の3つを同時に達成するX線回折イメージング技術が求められている。試料中の結晶構造分布を得るためには、回折X線の発生位置情報を保持できるX線光学素子を光学系に組み込む必要がある。従来、機械工作によるガラスキャピラリが用いられてきたが、製造技術的に高空間分解能化に対して限界があった。本研究課題では、電気化学的アプローチからアノード酸化法に着目した新規X線光学素子を作製し、上記3つを同時に達成できるX線回折イメージング法の開発に取り組んだ。 これまでの取り組みからアノード酸化条件の検討を進め、微細な細孔径や広視野領域の素子面積、充分な膜厚といったX線回折装置に適用可能な酸化皮膜を作製した。そして、X線回折イメージング法としての分析特性を評価すると、広い観察視野をもちながらも従来法と比較して空間分解能が向上することを確認でき、本イメージング法の有効性を実証した。2023年度の主な取り組みを下記に示す。 ①アノード酸化条件(電解液組成や濃度、浴温度など)と得られた酸化皮膜の性能(細孔径や膜厚など)を比較し、皮膜成長に寄与が高い要因を探索することで、酸化皮膜作製条件の高度化をさらに進めた。 ②予算にて購入した既存の検出器よりも素子サイズが小さい二次元検出器を用いることで、空間分解能を数10ミクロンオーダーまで向上させた。そして、本イメージング法をAlやCuの熱処理による結晶構造変化(相変態や酸化など)のその場観察へと応用展開した。 ③上記結果を国内学会(第83回分析化学討論会、第59回X線分析討論会、第71回応用物理学会春季学術講演)にて発表し、国際学術論文誌に投稿中である。加えて、所属機関が出展した展示会(第5回使えるセンサ技術展)にてポスター発表を行い、本研究成果の社会実装に向けた取り組みを進めた。
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