研究課題/領域番号 |
21K14660
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
齊藤 寛治 秋田大学, 理工学研究科, 助教 (20757314)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 光触媒 / 水質浄化 / 静電的凝集 / 粒子間電子移動 |
研究実績の概要 |
半導体光触媒による金属イオンの酸化/還元は水中での有害金属元素の定毒化および固体表面への固定化に有用である。比較的高い光触媒活性から, 低価格もあいまって有望な光触媒材料の一つとして知られるTiO2の有機物分解反応に対する光触媒活性が, 安価かつ温和な条件で調製可能なアパタイト型リン酸塩の添加により向上することを我々は明らかにしており, この戦略が水中での有害金属元素の定毒化に応用可能と考えた。令和4年度はアパタイト型リン酸塩添加による(i) TiO2の有機物分解反応に対する光触媒活性向上の機構の解明および(ii) Cr(VI)還元反応に対するTiO2の光触媒活性向上の検討に取り組んだ。 (i)TiO2とアパタイト型リン酸塩は両者の表面電荷が異符号となるpH条件下で凝集したことから, 両者間の静電的相互作用が示唆された。有機物分解反応に対するTiO2の光触媒活性はアパタイト型リン酸塩との凝集に依存したことから, 粒子界面を介した電子移動とTiO2における電荷再結合の抑制が光触媒活性向上の機構の候補として考えられた。加えてアパタイト型リン酸塩との凝集により水中におけるTiO2の沈降が促進されたことから, 反応後のTiO2ナノ粒子を簡便に回収する観点からも本戦略が有用であることが明らかになった。 (ii) アパタイト型リン酸塩の添加によるTiO2のCr(VI)還元反応に対する光触媒活性向上を確認した。還元されたCr(VI)はCr(OH)3としてTiO2/アパタイト型リン酸塩凝集体上に存在することが各種機器分析から示唆され, Cr(VI)の低毒化に加え水中からのCr回収も可能であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アパタイト型リン酸塩添加によるTiO2の水中での光触媒活性向上の機構解明は, 更なる高活性化の指針獲得ならびに有害金属元素の定毒化への応用のために重要であり, 本年度の検討課題としていた。両者の凝集はpHで制御可能であり, また両者が凝集するpH条件下でのみ有機物分解効率の向上を確認した。この結果は粒子間の電子移動と電荷再結合による光触媒活性向上を示唆するものであり, アパタイト型リン酸塩やTiO2の粒子形態や電子構造を制御することでさらなる活性向上が見込めると考えている。加えて, 本研究の標的反応の一つであるTiO2光触媒によるCr(VI)の還元もアパタイト型リン酸塩の添加により促進可能であることを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
光触媒活性向上の機構の候補として考えられた粒子間電子移動をより詳細に調査するため, 光照射下におけるTi還元種の定量を行う。電子移動を効率化するため, 結果をもとにアパタイト型リン酸塩ならびにTiO2の組成制御を行う。他方, TiO2のCr(VI)還元反応に対する光触媒活性はpHに依存することが指摘されている。反応が効率的に進行するpH条件下で両者が複合化するよう, 粒子表面電位の制御を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入を予定していた設備備品をより安価なもので代替した。また, 大学設備の使用に制限があったことから消耗品費の支出が当初の予定よりも小さくなった。参加を予定していた学会や研究会がオンライン開催されたため, 国内旅費の使用額が少なかった。 次年度使用分としては, 光触媒の調製に利用可能な凍結乾燥機や反応機構の解明に必要なガラス器具に充当することを予定している。
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