TiO2ナノ粒子の水中でのCr(VI)還元反応に対する光触媒活性を向上させる添加剤としてハイドロキシアパタイト(Hap)が有効であることを見出した。光照射下でのCr(VI)還元効率はTiO2とHapを分散させたCr(VI)水溶液のpHに依存し,TiO2とHapの等電点を考慮すれば両者の静電的相互作用による粒子界面形成並びに粒子間電荷移動に基づくTiO2での電荷再結合抑制が光触媒活性向上の一因として考えられた。 Hapは水中での表面電位が結晶面に依存することが知られており,添加するHapの粒子形態が光触媒活性におよぼす影響を検討した。粒子形態(結晶面)が制御されたHapを用いると,Cr(VI)還元反応に対するTiO2の光触媒活性がさらに向上し,貴金属を担時した従来のTiO2の光触媒活性にも匹敵した。 TiO2を単独で使用した場合でも,Cr(VI)水溶液のpHを制御することで光触媒活性は向上し,TiO2表面への反応物(CrO42-)の吸着と関連づけられた。この場合,TiO2の水分散性が向上し反応後のCr(VI)水溶液中からのTiO2の回収を困難にした。一方で,静電的相互作用に基づきHapと凝集したTiO2ナノ粒子は水中で速やかに沈降し,反応後の水溶液中から容易に回収可能であることが明らかとなった。 これらの知見から,水中での有毒金属イオンの低毒化に対してTiO2系ナノ粒子光触媒を有効に利用する指針が得られた。 最終年度は,Hap添加によるTiO2の光触媒向上機構解明のためのアプローチとして,反応後の固体上に析出したCr種の位置(反応サイト)並びに析出物の構造の特定に挑んだ。
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