研究課題/領域番号 |
21K14670
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
佐藤 浩平 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (40825197)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 生体膜 / 単層二次元高分子 |
研究実績の概要 |
本年度は、単層二次元高分子の原料となる芳香族アミンおよび芳香族アルデヒドの生体膜への導入を試みた。様々な検討の結果、リン脂質のクロロホルム溶液にこれらのモノマー分子を添加し、時間をかけて溶媒を蒸発させることで薄膜を形成させたのち、HEPESバッファーを加えてリン脂質・芳香族アミン・芳香族アルデヒド混合薄膜を水和させることで、リン脂質分子に対しておよそ10 mol%の比率で芳香族アミンおよび芳香族アルデヒドを生体膜の内部へと導入することに成功した。これは、研究当初に想定していた導入効率を遥かに上回る値である。なお、これらの分子の生体膜への導入効率は紫外可視吸収スペクトル測定によって評価している。 次に、このリン脂質・芳香族アミン・芳香族アルデヒド分散液に対してルイス酸触媒を加え、生体膜内部でのイミン形成反応による単層二次元高分子の合成を試みた。しかし、触媒やリン脂質、基質である芳香族アミンおよび芳香族アルデヒドの種類をはじめ、濃度・温度条件等の様々な反応条件を試したものの、いずれの場合においても単層二次元高分子に特徴的な吸収スペクトルを観察することはできなかった。その原因として、ルイス酸触媒が生体膜内部の疏水的な環境にアクセスすることができなかったために反応が進行しなかった可能性や、仮にイミン結合が形成しても、生体膜を取り囲む水分子によって、それらが直ちに加水分解されてしまった可能性等が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
生体膜の内部への芳香族アミンおよび芳香族アルデヒドの導入については、条件を最適化した結果、リン脂質分子に対しておよそ10 mol%という当初の想定以上の導入効率を達成することができた。その一方で、現時点では単層二次元高分子の合成には至っていないため、全体の進捗としては当初の想定よりもやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
上記の問題点を徹底的に排除し、生体膜内部における高分子合成反応を実現するために、水分子の影響を受けない重合反応の選択および、触媒分子を生体膜内部に導入するための戦略を再考した。そして、両親媒性構造を有する金属触媒を新たに設計することとした。我々はこれまでに、疎水性のトラン骨格と親水性のオリゴエチレングリコール鎖からなる様々な両親媒性分子を開発しており、それらを生体膜の内部へと効率良く導入することに成功している。そこで、本研究においてもこの基本分子設計戦略を採用した。既報に従って両親媒性分子を合成したのち、金属触媒部位を導入し、生体膜の内部への導入および重合反応を実施していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際的な物流の滞りにより、当初購入を予定していた備品の購入が遅れたほか、参加を予定していた国際学会等も中止となったため、次年度使用額が生じることとなった。2022年度は、当初から予定していた備品の購入を行うほか、新たな国際学会に参加し、研究成果の発表を行う予定である。
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