研究課題
金属錯体の配位子は、多座のキレート配位子と単座の非キレート配位子に大別される。これまで、典型元素錯体の物性制御は、主にキレート配位子が有するπ電子系の修飾・変換によって実現されてきた。一方、非キレート配位子を用いた物性制御のための指針は体系化されてこなかった。そこで本研究では、キレート配位子と非キレート配位子間の電子的相互作用を用いた物性制御の新手法を確立することを目指した。まず、異なる非キレート配位子をもつ種々のケイ素ホルマザン錯体を合成し、キレート-非キレート配位子の軌道エネルギーの差を調整することで吸収・発光波長が制御できることを明らかとした。この錯体を共役系高分子の主鎖に導入することによって、イメージングなどに有用な1000 nm以上の近赤外領域に発光を示すフィルム材料を開発した。一方、配位子間の相互作用はπ電子系とσ電子との相互作用であるため、立体電子効果の影響も強く受けることが予想された。そこで、キレート配位子上に大きさの異なる置換基を有するアルミニウム錯体を合成し、それらの光学特性の違いを検討した。その結果、結合した二つの共役平面のなす二面角とこれらの共役系のエネルギー準位が変化することで、リン光発光強度が著しく増大するとともに、一部室温リン光特性を有する錯体を得ることができた。これに加え、13族元素ジアルジミン錯体を対象として、キレート・非キレート配位子の構造を揃え中心元素のみを変えたときの変化について評価した。中心元素の種類に応じて非キレート配位子と元素間の共有結合性が変化し、ルイス塩基に対する発光の応答性が調整できることが明らかとなった。以上のように本研究を通じて、配位子間のエネルギー差、立体電子効果、および共有結合性に着目することが、キレート配位子と非キレート配位子との相互作用の制御に基づく機能性発光錯体の設計指針となることを示した。
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Macromolecular Chemistry and Physics
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