近年、環境・エネルギー問題対策として、システムの軽量化を目的にさまざまな分野で無機材料のポリマー系材料への置き換えが進んでいる。ガラス状ポリマーは透明性が高く、無機ガラスの代替が期待されるが、硬さと粘り強さの両立が難しかった。さらに、最近では資源の有効利用を目指し、サステイナブルな材料創成が求められている。そこで申請者は、代表的なガラス状ポリマーで最も高い透明性を持つポリメタクリル酸メチル(PMMA)を用いて、持続可能な方法で硬さを保ったまま粘り強さを付与できる材料設計指針を確立し、資源循環型社会に寄与する「力学特性制御により硬さと粘り強さの両立を実現した革新的ガラス状ポリマー」を創出できると考えた。さらに申請者の最近の研究から、分子間相互作用を利用することで、共有結合と同等の強い結合と、高い分解性により元の汎用性 ポリマーに簡単に戻すことができる可能性が見出された。本申請課題ではこの技術を利用し、「確実な結合とやさしい分解」を有し、「硬さと粘り強さ」を両立する材料設計指針を構築することを目的とするものである。 初年度に得られた応力―ひずみ曲線について構成方程式を作成し、各水分量の応力―延伸比曲線において良好にフィッティングできることを明らかにした。構成式にPMMAの分率αを入れて、αがひずみとともに定数kを指数として変わっていくという非平衡構成方程式を導入した。解析の結果、定数kは塩濃度にはよらず、水の量にのみ依存することがわかった。最近では塩のカチオン種を系統的に変えた系についても実験を行い、論文にまとめている段階である。
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