次世代型メディカルデバイスを構築するための高分子材料は、生体成分の高い付着抑制能(防汚特性)が要求される。分岐構造を有する高分子は、異種高分子と混合しブレンド膜を作製した際、その低い表面自由エネルギーを利用して界面に選択的に濃縮することで防汚特性を付与できることが報告されている。本研究では、汎用性高分子基材に恒久的な防汚特性を付与するため、親水性鎖と疎水性鎖を有する新たなボトルブラシ型高分子を界面濃縮駆動型高分子と位置づけ設計し、水中における材料界面の分子鎖凝集状態と防汚特性との相関について検討した。 原子移動ラジカル重合法を用いてボトルブラシ型高分子ブロック子ポリマー(EbS)およびランダムコポリマー(ErS)を得た。大気中で測定した EbS/PMMA 膜およびErS/PMMA膜はいずれも平滑であった。X線光電子分光法によりSi2pとC1Sシグナルの積分強度比(Si2p/C1S)をsin φeの関数した結果、ISi2p/IC1Sは分析深さが浅くなると大きくなった。この結果から、EbS/PMMA 膜とErS/PMMA 膜の表面には EbS と ErS がそれぞれ濃縮することが明確となった。両膜上におけるNIH/3T3 細胞の12 h および 72 h 培養後の顕微鏡像である。EbS/PMMA膜は、EbS/PMMA 膜にくらべ細胞形態が球状であり伸展が抑制された。 以上の結果から、EbS は ErS に比べ細胞の接着抑制が高いことが明らかである。すなわち、親水性ユニットが連続した構造を有するブロック共重合体(EbS)の水界面近傍における分子鎖凝集構造は、防汚特性を示すための重要な設計条件であることが見い出された。
|