研究実績の概要 |
成形性に優れ、材料リサイクルが可能な低環境負荷材料である熱可塑性エラストマーに対し、共有結合に由来する架橋が可能で、さらに加熱による解架橋が可能な応答性部位を導入することで、化学架橋に基づく高耐久性と、熱可塑性に基づく高生産性・リサイクル性を兼ね備えたエラストマーの開発を目的としている。本年度は、光により架橋し、加熱による解架橋が可能な応答性部位として、アントラセン誘導体と1,4-フェニレンジアクリル酸エステル誘導体を検討した。最終的には熱可塑性ポリウレタンのポリマー主鎖に導入するため、ヒドロキシ基を2つもつ応答部位の合成を検討した。アントラセン誘導体は、アントラキノンを原料として2段階で、9,10-ビス(ヘンキサノロキシ)アントラセンを合成した。目的物を単離し、質量分析で合成を確認した。しかし、室温で徐々にアントラキノンに分解することが確認され、安定な光応答部位としては利用が難しいことが判明した。次に、1,4-フェニレンジアクリル酸の利用を検討した。難溶性の1,4-フェニレンジアクリル酸を溶解させるため、NMPを溶媒に用いて1,4-ブタンジオールと脱水縮合を行った。縮合物を再沈殿して回収し、1HNMRにより、目的のエステル結合を有するオリゴマーが得られたことを確認した。クロロホルム溶液から乾燥させた薄膜状のオリゴマーに対し、紫外光照射を行うと、FT-IRでアクリルの二重結合に由来するピークが消失し、光架橋が進行したことを確認した。架橋したサンプルを200℃で加熱すると、黄変したが、FT-IRのピークに変化は見られず、この温度では解架橋が難しいことが判明した。
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