最終年度は、本カチオン染色法の捺染(プリント)技術への応用を試みた。捺染は、本染色方法の還元工程に必要な試薬(還元剤、アルカリ剤、染料)をすべて包含したペーストを作製し、このペーストをPP生地上に塗布してから加熱することにより行った。加熱条件(湿熱、乾熱)及び還元剤の種類を検討したが、還元剤として、より空気酸化を受けにくい薬剤を使用したところ、捺染に成功した。また、この捺染条件を用いて、スクリーン捺染で10cm×14cmの柄の印刷に成功した。表面改質等の前処理を経ないPP生地への捺染は、本技術をおいて他になく、画期的な手法であると考える。 研究期間全体の成果としては、初年度にPP糸の延伸倍率が染色性に与える影響を調査し、その結果から、本染色法において、繊維の非晶領域が染色性に関与しているという推論に支持を与えることができた。次年度は、世界中で普及率の高い染色機である、液流染色機を用いてスケールアップ研究を行い、11m×0.8mのニット生地の染色に成功した。本研究で得られた知見を活用することにより、実際の染色現場で使用されている機種においても本染色法を再現できる可能性は高いと考える。最終年度は、上述のプリント技術への応用を達成した。 本染色法は繊維産業において、PP繊維の利用を大幅に拡大させる可能性がある。染色整理業のみならず、整布、縫製、小売等の幅広い繊維産業に好影響を与えることが期待できる。
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