研究課題/領域番号 |
21K14693
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
筒井 祐介 京都大学, 工学研究科, 助教 (50845592)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 共役高分子 / 化学ドープ / 電磁波分光法 |
研究実績の概要 |
磁気抵抗効果は、外部磁場の印加に伴って電気抵抗が変化する現象であり、近年では、無機材料に限らず有機半導体材料においても磁気抵抗効果が観測されつつある。例えば近年、化学ドープされた共役高分子材料において、外部磁場印加によって電気抵抗が減少する負の磁気抵抗効果が観測されており、Hikami-Larkin-Nagaokaらの弱局在モデルを示唆している。通常このような磁気抵抗効果は特に有機材料に関して低温でしか観測できなかったが、ある材料系では高温領域にまで明確な磁気抵抗効果が見られることが報告されており、その電子状態について興味が持たれる。 本年度は化学ドープされた共役高分子材料に関して、電磁波分光法を用いてその電子状態の観測を行った。試料として特にドープ密度をコントロールし、高いドープ密度、低いドープ密度の試料を作製した。 化学ドープ前に観測される可視光領域の基礎吸収は化学ドープに伴って減少し、赤外領域にポーラロン形成に伴う吸収ピークが観測された。高ドープになるに従い、ポーラロン束縛エネルギーが小さくなり、電荷の段階的な非局在化が示唆されている。これに伴い、電気伝導度の大幅な向上が確認できた。今後はこの試料を含めた広範な材料系に関して磁気抵抗効果測定を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、初年度において化学ドープされた高分子材料の電子状態を観測することに成功した。光学分散によると、高ドープ試料ではDrude様の電気伝導度を有していたが、低ドープ試料では局在化が顕著であることを明らかにした。この試料では従来より大きな磁気抵抗効果信号が期待できると考えている。 コロナウイルス等の近年の状況のため部品の調達が通常より難しくなっているが、磁気抵抗効果の観測についても測定装置の組み上げを行い、室温、1 Tの条件下で一部マイクロ波応答で取得することに成功している。この系に関しては時間によるドリフトがあることや、システムの安定性が低いこともあり、より正確な測定を行うために今後改善を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の方針としてシステムの安定性を向上させ、より精密な測定ができるように改良を行う。また、高ドープ高分子材料やCOF材料の誘電分散および磁気抵抗効果の測定も行っていく。 現在時間分解磁気抵抗効果の観測に関して光励起型のシステムを構築しているため、こちらも引き続き開発を行う。
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