磁気抵抗効果は、外部磁場の印加に伴って電気抵抗が変化する現象であり、近年では、無機材料に限らず有機半導体材料においても磁気抵抗効果が観測されつつある。例えば近年、化学ドープされた共役高分子材料において、外部磁場印加によって電気抵抗が減少する負の磁気抵抗効果が観測されており、Hikami-LarkinNagaokaらの弱局在モデルを示唆している。通常このような磁気抵抗効果は特に有機材料に関して低温でしか観測できなかったが、ある材料系では高温領域にまで明確な磁気抵抗効果が見られることが報告されており、その電子状態について興味が持たれる。 本年度は磁気抵抗効果を示す候補材料としてCovalent Organic Framework(COF)の新規合成を試みた。ピレンを主骨格として用いたCOFにおいて、そのピレン部位では中心骨格と芳香環の水素の立体反発によりねじれが発生しているが、アザピレンに置換することでこの立体障害が緩和されていることが分かった。構造の同定を行うため、X線回折測定、原子間力顕微鏡や透過型電子顕微鏡などを用いて、その高い結晶性と周期性が確認できた。電気伝導特性について電磁波分光法および2端子法を用いて評価したところ、アザピレン体においては高い光過渡電気伝導度および静的電気伝導度を得ることができた。さらにトリフルオロ酢酸を用いることで、アザアセン部位のプロトン化を行うことができ、電気伝導度は5 x 10^(-5) Sm-1まで向上が確認できたが、明確な磁気抵抗効果は観測されておらず、条件の改善が必要だと考えられる。
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