本研究では、ジクマロール超分子マイクロファイバーの形成メカニズムを分子レベルから解明するとともに、精密な分子設計に基づき、成形加工性に富むマイクロファイバーを用いた新機能・新材料の開発を目指す。これまでの研究では、いくつかの低分子ジクマロール誘導体から1メートル以上の超分子マイクロファイバーを一本ずつ取り出すことに成功した。2023年度は、この超分子マイクロファイバーの作製方法の規格化を試みた。例えば超分子ファイバーを作るための母液の濃度を時間経過で記録し、ファイバー作製の温度を調査した。また、超分子マイクロファイバーが時間経過で表面が変化することを走査型電子顕微鏡で観察した。超分子マイクロファイバーの内部構造を透過型電子顕微鏡で観察した。
研究期間全体を通して、ジクマロール超分子ファイバーを形成する基本骨格を分子レベルで解明することができた。それぞれの置換基による分子間相互作用が超分子マイクロファイバーに及ぼす巨視的な影響を突き止めた。特定な低分子集合体は外部から力を加えると極めて高い異方性をもつ自己集合体を形成することがわかった。非共有結合のみからなる1メートル以上の自己集合体を形成する報告は本研究が初めてである。得られた研究成果は2022年日本化学会中国四国支部大会広島大会、第72回高分子討論会、2023年繊維学会秋季研究発表会で口頭発表をした。今後は超分子マイクロファイバーの高い親和性や自己修復性を用いて新材料の開発を行う。
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