プロトン伝導体はセンサーや燃料電池など幅広い応用により多大な研究があるが、研究対象は特定の結晶構造に限られていた。また、既存材料は高い伝導度を示すために化学置換が必要で安定・均一性に難があった。本課題では、申請者が新たに発見した中低温域(300~600℃)において化学置換無しで高い伝導度を示す新材料をもとに、関連物質において ①構造解析を駆使して伝導メカニズムを明らかにするとともに、②組成・構造の制御によりさらに高い伝導度を持つ組成の発見を目指した。 一連の物質探索により、新型プロトン伝導体Ba2ScAlO5を発見した。同物質は従来のプロトン伝導体とは異なり、化学置換なしにも関わらず高いプロトン伝導度を示す。また、中性子回折測定データへの構造解析および第一原理分子動力学法計算により、プロトンが伝導するメカニズムを明らかにした。同内容は学術誌に投稿中である。また、同構造を持つ新物質の発見にも成功しており、こちらの成果も学術誌に投稿中である。 さらに、高い酸化物イオン伝導度を示す六方ペロブスカイト関連酸化物において新型イオン伝導体の材料探索を行った。Ba7Nb4MoO20系材料において、Wドープにより酸化物イオン伝導度が向上し、同時にプロトン伝導度が著しく下がることを発見した。また、Taを置換した新物質において、酸化物イオン伝導度が上昇するとともに、化学安定性・電子的安定性が向上することを明らかにした。これらの成果は学術誌に発表済みである。
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