• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実施状況報告書

インターカレーションで膨潤する柔構造のシミュレーション法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 21K14705
研究機関工学院大学

研究代表者

宮川 雅矢  工学院大学, 先進工学部, 助教 (80758350)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード分子動力学法 / 吸着 / 層状粘土鉱物 / モンモリロナイト / 有機粘土
研究実績の概要

前年度は粉体どうしを混ぜ合わせることによって進行する固相吸着に関するシミュレーション法を開発した.今年度は有機粘土が一般的に用いられる液相吸着反応について,材料としての最適化およびシミュレーション法の開発を目的とした.
吸着量は有機粘土・吸着質の種類によって大きく異なり,混ぜてみないと分からないというのが現状である.この問題を機械学習を用いて解決できないか検討した.具体的には,液相吸着に関する実験データを論文から収集し,学習モデルを構築した.その結果,テストデータを入力したときの吸着量は実験値をよく再現し,実験せずとも吸着量が予想することに成功した.また,これまではわからなかったホストである粘土・修飾材である有機カチオン・吸着質がそれぞれ吸着量に対してどの程度影響を及ぼすのかを,平衡濃度ごとに定量的に明らかにした.
液相吸着シミュレーションの開発については,含水率の推定および含水構造の決定を中心に検討した.熱重量分析(TG)の実験データから含水率を見積もることで,含水有機粘土のモデリングを行い,疎水的と考えられている層間に水がインターカレートされることでカチオンの配座・配向がどのように変わるかを明らかにした.次に,吸着等温線データから吸着量を算出することで,液相における吸着構造のモデリングをおこなった.その結果,吸着質をベンゼンとしたときの吸着量のカチオン種依存性は有機粘土の表面構造の違いによって説明できることを明らかにした.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

実験による決定が難しいとされていた含水構造を明らかにできており,同様に観測が非常に困難な吸着構造についても達成できている.一般に混ぜてみないとわからないと考えらえていた吸着特性の違いについても,構造をもとにその由来を説明することができている.

今後の研究の推進方策

含水率を実験値に頼らずに計算でのみ決定する手法を開発する.また,同様に吸着特性についても構造だけでなくエネルギーで定量的に評価できる計算手法を開拓する.
現状ではモンモリロナイトのみがモデリング可能な粘土であるが,サポナイトやヘクトライトといった一般的に用いられる他のスメクタイト族粘土鉱物も計算できるようにさまざまな層状粘土鉱物のモデルを作製する.そして,これらの粘土鉱物をホストした有機粘土のモデルを作製し,さらにこのような複合体で見られる特異な吸着特性・光学特性などについてその由来を分子論に基づいて明らかにする.

次年度使用額が生じた理由

予定していた国際会議(MRS,ハワイ)に講義の都合で参加できずに旅費が浮いた.また,購入を予定していた計算機の拡張パーツCPUおよびメモリは,既存の計算機のスペックでぎりぎりではあるが計算可能であったため,2022年度での購入を見送った.しかし,2023年度に取り組む計算は従来の10倍以上の計算コストを要する見込みであるため,もともと2022年度に購入予定だったこれら拡張パーツCPUおよびメモリを,2023年度の予算に計上済みである計算ソフトとともに購入することで,当初から予定している研究を遂行し,目的を達成する.

  • 研究成果

    (21件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 3件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Estimation of Adsorbed Amounts in Organoclay by Machine Learning2023

    • 著者名/発表者名
      Shobuke Hayato、Matsumoto Takumi、Hirosawa Fumiya、Miyagawa Masaya、Takaba Hiromitsu
    • 雑誌名

      ACS Omega

      巻: 8 ページ: 1146~1153

    • DOI

      10.1021/acsomega.2c06602

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Molecular Dynamics Simulation of Adsorption in Two-dimensional Interlayer of Layered Clay Minerals2022

    • 著者名/発表者名
      Miyagawa Masaya、Takaba Hiromitsu
    • 雑誌名

      MEMBRANE

      巻: 47 ページ: 84~91

    • DOI

      10.5360/membrane.47.84

    • 査読あり
  • [学会発表] Effective utilization of montmorillonite surface for adsorption of aromatic compounds revealed by molecular dynamics simulation2022

    • 著者名/発表者名
      Masaya Miyagawa, Fumiya Hirosawa, Hiromitsu Takaba
    • 学会等名
      International Clay Conferences 2022
    • 国際学会
  • [学会発表] Interlayer structure of organoclay saturated with water by molecular dynamics simulation2022

    • 著者名/発表者名
      Shoma Nishimura, Fumiya Hirosawa, Masaya Miyagawa, Hiromitsu Takaba
    • 学会等名
      International Clay Conferences 2022
    • 国際学会
  • [学会発表] Prediction of adsorption amount of aromatic compounds in organoclay by machine learning2022

    • 著者名/発表者名
      Hayato Shobuke, Takumi Matsumoto, Masaya Miyagawa, Hiromitsu Takaba
    • 学会等名
      International Clay Conferences 2022
    • 国際学会
  • [学会発表] 二次元ナノ材料の構造と物性の実験と計算によるアプローチ2022

    • 著者名/発表者名
      宮川雅矢,廣澤史也,正部家隼人,田中秀樹,中戸晃之,高羽洋充
    • 学会等名
      ナノ学会第20回大会
  • [学会発表] 機械学習による有機粘土が示す吸着量の決定因子の探究2022

    • 著者名/発表者名
      正部家隼人,宮川雅矢,高羽洋充
    • 学会等名
      ナノ学会第20回大会
  • [学会発表] 機械学習による有機粘土吸着材の吸着量予測2022

    • 著者名/発表者名
      正部家隼人,松本拓海,廣澤史也,宮川雅矢,高羽洋充
    • 学会等名
      粘土学会若手の会第13回若手研究者研究発表会
  • [学会発表] 分子動力学法を用いた有機修飾モンモリロナイトの水による飽和膨潤状態の推定2022

    • 著者名/発表者名
      西村翔馬,廣澤史也,宮川雅矢,高羽洋充
    • 学会等名
      粘土学会若手の会第13回若手研究者研究発表会
  • [学会発表] 水で膨潤したアルキルアンモニウムイオン修飾モンモリロナイトの構造およびフェノール類の吸着サイトの計算化学による解明2022

    • 著者名/発表者名
      宮川雅矢,濤崎啓吾,廣澤史也,高羽洋充
    • 学会等名
      第65回粘土科学討論会
  • [学会発表] 分子動力学法による水で膨潤したメチルビオロゲン修飾モンモリロナイトの構造解析2022

    • 著者名/発表者名
      西村翔馬,廣澤史也,宮川雅矢,高羽洋充
    • 学会等名
      第65回粘土科学討論会
  • [学会発表] 機械学習による有機粘土吸着材の吸着特性予測2022

    • 著者名/発表者名
      正部家隼人,松本拓海,廣澤史也,宮川雅矢,高羽洋充
    • 学会等名
      第65回粘土科学討論会
  • [学会発表] 機械学習を用いた有機粘土の吸着特性の予測と組成が与える影響の解明2022

    • 著者名/発表者名
      正部家隼人,松本拓海,廣澤史也,宮川雅矢,高羽洋充
    • 学会等名
      日本化学会「低次元系光機能材料研究会」第11回サマーセミナー
  • [学会発表] 分子動力学法シミュレーションによる水和した有機修飾モンモリロナイトの飽和構造の推定2022

    • 著者名/発表者名
      西村翔馬,廣澤史也,宮川雅矢,高羽洋充
    • 学会等名
      日本化学会「低次元系光機能材料研究会」第11回サマーセミナー
  • [学会発表] 水分子が疎水性層状物質の吸着サイトおよび特性に与える影響の分子動力学法による解明2022

    • 著者名/発表者名
      宮川雅矢,濤崎啓吾,廣澤史也,高羽洋充
    • 学会等名
      化学工学会第53回秋季大会
  • [学会発表] 有機修飾粘土の飽和含水率の分子論的研究2022

    • 著者名/発表者名
      西村 翔馬、廣澤 史也、宮川 雅矢、高羽 洋充
    • 学会等名
      分離技術会年会2022
  • [学会発表] 機械学習を利用した有機粘土の吸着量予測および組成最適化2022

    • 著者名/発表者名
      正部家 隼人、松本 拓海、宮川 雅矢、高羽 洋充
    • 学会等名
      第45回ケモインフォマティクス討論会
  • [学会発表] 分子動力学法による有機粘土の層間カチオン種と含水率の相関の解明2022

    • 著者名/発表者名
      西村 翔馬、廣澤 史也、宮川 雅矢、高羽 洋充
    • 学会等名
      化学工学会第88年会
  • [学会発表] 有機粘土層間へのフェニル基の導入がベンゼン吸着に与える影響の分子動力学法による解明2022

    • 著者名/発表者名
      大城 貴和子、西村 翔馬、廣澤 史也、宮川 雅矢、高羽 洋充
    • 学会等名
      化学工学会第88年会
  • [学会発表] 分子シミュレーションによる層間化合物の含水量および吸着特性の推定2022

    • 著者名/発表者名
      宮川 雅矢、濤崎 啓吾、廣澤 史也、高羽 洋充
    • 学会等名
      化学工学会第88年会
  • [図書] 吸着技術の産業応用~基礎知識・吸着剤の特性・技術応用事例~2023

    • 著者名/発表者名
      宮川雅矢,正部家隼人,高羽洋充
    • 総ページ数
      348
    • 出版者
      情報機構
    • ISBN
      978-4-86502-244-5

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi