含水有機粘土のモデルを分子動力学(MD)法およびグランドカノニカルモンテカルロ(GCMC)法で作成し,含水層間における吸着質-有機カチオン間の相互作用が存在することを明らかにした.また,粘土の種類を変えた検討をおこない,モンモリロナイト・サポナイト層間における水の拡散性の違いをMD法で求められる拡散係数に基づいて明らかにした.拡散係数は有機カチオンの直鎖の長さに強く依存しており,これは表面では隔離された細孔に水が閉じ込められることによると考えられた.さらに構造を解析することで,表面・中心それぞれに分布している水の量および拡散性を定量的に議論することができた.このとき,表面近傍の水は層との相互作用が影響することで水平に拡散しやすい一方で,中心部の水は比較的鉛直方向にも拡散しやすいことがわかった. 実際に水がどのように拡散するかについては,座標情報を2次元ヒストグラムとして評価することで可能にした.その結果,部分的なカチオンの置換は水の拡散パスを確保するために有用であることが明らかとなった.さらに,カフェインを吸着質として含む系の検討では,実験値をもとにモデルを作成することで吸着にともなう水分子の脱離が起きることを明らかにした. 研究期間全体の成果として,含水有機粘土のモデリング手法を確立した.特に,含水率については熱重量分析による実験値によるモデリングの他に,新たに層間にインターカレートした水分子のエネルギーの解析による熱力学的手法を開拓した.水中における吸着質の挙動については,メチル基のような非常にシンプルで機能性があるとは考えられていなかった官能基でも吸着には有利にはたらくことを明らかにした.さらに,測定や解析が難しい水のダイナミクスについても明らかにした.
|