カーボンリサイクル技術ロードマップの達成へ向けて、一酸化炭素(CO)から燃料を製造する技術の確立は重要な位置づけにある。そこで本研究では、CO自身を燃料として発電する新規燃料電池(H2-CO燃料電池)の開発を目指す。本電池はアノードに水素(H2)ガス、カソードにCOガスを供給するため、COを還元しながら(有用生成物であるメタンを生成しながら)発電できる革新的電池となる。本研究の目的は、そのH2-CO燃料電池を実験的に実証することであり、そのためにはCO還元反応の制御が重要となる。したがって本研究では、H2の標準酸化還元電位(0 V)より貴電位でメタン(CH4)生成反応を進行させること、またその際のCO転化率60%以上を達成目標項目として研究を遂行する。本年度の主な研究成果は次のとおりである。Pt/C電極触媒を有する膜電極接合体を組み込んだ固体高分子形セルを設計し、CO還元によるCH4生成反応を定量的に議論した。生成物の分析法にはインライン質量分析法を採用し、昨年度までに実施したCO濃度依存性および電位依存性の検討から最適化された条件(CO濃度2 ppm、カソード電位0.12 V vs. RHE)下での定電位CO還元を実施した。なお、CO濃度は不活性ガス(アルゴン)で希釈することにより調整した。その結果、CO還元によるCH4生成が連続して検出されるとともに、その効率(CO転化率)は68.6%と非常に高効率な値を示した。また、H2-CO燃料電池としての発電性能試験を行ったところ、セル電圧0.12 Vにて約0.03 mW/cm2の最大出力密度を示し、CH4生成しながらH2-CO燃料電池として発電することに成功した。以上より、Pt/C電極触媒を有する固体高分子形セルを使用し、COを還元しCH4を高効率連続生成しながら発電するH2-CO燃料電池が実証された。
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