研究課題/領域番号 |
21K14719
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鈴木 肇 京都大学, 工学研究科, 助教 (10862873)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 光触媒 / 酸ハロゲン化物 / 水分解 |
研究実績の概要 |
近年、ソーラー水素製造のための可視光水分解用光触媒として、Sillen(-Aurivillius)型層状酸ハロゲン化物が注目されている。本研究では、異なる2種類のハロゲン層を構成層として含むSillen型層状酸ハロゲン化物PbBi3O4Cl3が可視光水分解用光触媒(二段階励起型水分解システムの酸素生成用光触媒)として機能することを見出した。さらに、臭素置換体であるPbBi3O4Br3との比較や、第一原理計算、マーデルング解析等によってハロゲンアニオンの静電的安定性がバンド構造や光触媒特性のチューニングに重要な因子であることを明らかにした。続いて、PbBi3O4Cl3の類縁体に関して材料探索を進め、可視光水分解用光触媒として機能する材料を新たに見出した。この材料の合成法を改良することによって、光励起キャリア移動特性の改善と、それによる可視光酸素生成活性の大幅な向上に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の研究目標として以下の内容を掲げていた。 「ペロブスカイト層を持たない様々なSillen型酸ハロゲン化物のバンド計算、時間分解マイクロ波伝導度測定、光触媒活性の評価によってフルオライト層の層構造や元素種、ハロゲン層の層数が電子物性と光触媒活性に与える影響を明らかにする」 実際に、Sillen型層状酸ハロゲン化物PbBi3O4X3 (X=Cl, Br)のバンド計算、時間分解マイクロ波伝導度測定、光触媒活性の評価によってハロゲン層の層数が電子物性と光触媒活性に与える影響を明らかにすることができた。さらにフルオライト層の層構造や元素種の影響に関しても別の研究で、徐々に明らかになっている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は、ペロブスカイト層を持たないSillen型酸ハロゲン化物のバンド計算、時間分解マイクロ波伝導度測定、光触媒活性の評価によってハロゲン層の層数が電子物性と光触媒活性に与える影響を明らかにした。本年度は、ペロブスカイト層を有するSillen-Aurivillius型とSillen型酸ハロゲン化物の比較によってペロブスカイト層の役割を明らかにする。またSillen-Aurivillius化合物のペロブスカイト層は厚みを1層から5層まで系統的に合成できることを見出しており、その厚みとTRMCシグナルや光触媒活性の関係についても考察する。有望な材料に関しては、近年申請者らが開発したCsCl/NaCl共晶系を用いたフラックス合成や錯体重合法を介した二段階合成法を用いて高結晶化・低欠陥密度化・高表面積化することで、更に活性を向上させる。バルクの構造を最適化した後には、表面構造の観察とその最適化を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、昨年度必要がなかった各種消耗品類や実験装置を購入する必要があるので次年度使用額が生じている。
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