研究課題/領域番号 |
21K14724
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
多々良 涼一 東京理科大学, 理学部第一部応用化学科, 助教 (20876081)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | カリウムイオン電池 / オペランド測定 / 質量分析 |
研究実績の概要 |
カリウムイオン二次電池は、現行の蓄電デバイスとして広く利用されているリチウムイオン二次電池に比べ、希少金属や有害元素を含まない電池として期待されている。しかしながらカリウムイオン電池の劣化についてはリチウムイオン電池と異なる挙動が多く、未だ劣化のメカニズムが明らかとなっていない。劣化メカニズムを解明するには電池セル内で発生する微量の分解物を検出することが必須であるが、このためには分解物を①高感度で、かつ②時間分解能よく検出することが求められる。本研究では電池運転中に同時分析を行うオペランド質量分析法を用いて、カリウムイオン電池の充放電中の微量分解物を検出・分析しその劣化メカニズムを明らかにすることを目的とした。
初年度である2021年度は、①充放電後の電解液を電池セルから取り出しガスクロマトグラフィー質量分析測定(通常測定)を行うことで分解物成分を同定した。また②オペランド法の測定環境の構築に成功した。 ①通常測定では電子イオン化法と化学イオン化法を使い分け、分解物分子の官能基情報と分子量情報を別々に取り出し、ライブラリマッチングと組み合わせることで分解物の化合物同定に成功した。カリウムイオン電池の充放電反応後では、炭酸エステル溶媒が複数分子重合しオリゴマーを形成する反応の進行が確認できた。またこれらの反応は特定の添加剤を加えることによって抑制されることがわかり、添加剤の分子設計に有用であった。 ②特注の電気化学セルを試作し、オペランド測定の測定系構築とガス検出確認、再現性確認を行った。第1世代設計セルでは再現性のあるガス検出ができなかったものの、改良を加えた第2世代セルでは、添加剤を加えた際の二酸化炭素発生量の増減などを観測し、これらが添加量から予想される理論発生量と近しいこと、再現よく検出されることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度にて本課題の主軸たるオペランド測定系の設計・構築と再現性確認を行うことができ、順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は設計・最適化が完了したオペランド測定を実際のカリウムイオン電池充放電反応に適用し、通常測定で検出されていた分解物オリゴマーが充放電過程のどの段階で生成するか、また炭酸ガス等の一般的な分解ガスの生成量の変化等を評価することで、カリウムイオン電池劣化機構の解明に迫っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
世界的な半導体供給不足により、交付申請時に購入を計画していたポテンショスタット(232万円)の納期が長期化し、発注済みであるものの昨年度中に納品されなかったため次年度使用額として計上されている。当該装置は今年度に納品予定である。
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