研究課題/領域番号 |
21K14728
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研究機関 | 久留米工業高等専門学校 |
研究代表者 |
我部 篤 久留米工業高等専門学校, 生物応用化学科, 准教授 (10840142)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 炭素材料 / エッジサイト / 含酸素官能基 / アクティブサイト / 酸素還元反応 |
研究実績の概要 |
炭素は芳香族網面が積み重なった構造をしており網面中の端のエッジ面は基底面と比較し反応性に非常に富んでいる。炭素のエッジ面に存在する含酸素官能基が熱分解することでアクティブサイトが析出することが知られており、アクティブサイトは炭素のガス化反応の活性点として機能や酸素還元反応の活性点に変形すると考えられている。しかしながらアクティブサイトの生成や消滅機構に関しては不明瞭な点が多い。本研究では、炭素の含酸素官能基の存在位置・種類・量に着目しアクティブサイトの生成、消滅機構を解明しそれらを制御し、炭素エッジ面で進行する多様な反応において高い活性を実現する新規ナノ炭素の創製及びその構造解析を目指していく。本年度は一次粒子径が13 nmと小さく、かつストラクチャーの発達度も比較的低いカーボンブラックをモデル炭素として、含酸素官能基の導入方法の検討及び導入後の試料の基礎的評価を行った。含酸素官能基の導入法としては液相酸化である硝酸処理、気相酸化である空気酸化とオゾン酸化を用いた。昇温脱離(TPD)分析、XPS測定、ラマン分光測定、窒素吸脱着測定、滴定法、接触角測定、赤外分光測定にて調製した試料の詳細な分析を行った。同時に含酸素官能基自身が触媒作用を示すセルロースの加水分解反応を調製した炭素試料を用いて行った。調製した試料の詳細な解析と活性試験から含酸素官能基の存在位置・種類・量による炭素の水分散性や細孔特性への影響を明らかにすることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TPD及びXPS測定結果から試料の外表面のみに存在する含酸官能基の量を近似的に算出することに成功した。その結果、酸化手法の違いにより導入出来る含酸素官能基の存在位置・種類・量が大きく異なることを発見した。具体的には硝酸処理や空気酸化は試料全体に含酸素官能基を導入出来る一方で、オゾン酸化は適切な処理温度や濃度とすることで、細孔特性を維持しつつ試料の極外表面への選択的な導入を可能にする。更に炭素試料の水分散性能はバルクの含酸素官能基量では決定されず、カルボキシル基が極めて重要な因子であることを見出した。実際にセルロースの加水分解反応の活性では、試料外表面に存在する酸性の含酸素官能基量が活性点であることを明らかにした。これらの知見は炭素材料に関連する様々な触媒反応に応用することが可能であると考えられるため、研究の進捗状況としてはおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究結果から炭素の含酸素官能基の存在位置・種類・量が異なる炭素試料の調製に成功している。今後は炭素試料としてカーボンブラックに加えてカーボンナノチューブや規則性が高い鋳型炭素も活用し同様に含酸素官能基の導入を行う。オゾン処理は試料の細孔特性を変化させずに含酸素官能基の導入が可能であるため、エッジ面を多量に有している鋳型炭素でオゾン処理を行い、規則構造を示しかつ多量の含酸素官能基を有する試料を調製する。導入後の試料に関して研究計画に記載したように熱処理の雰囲気ガスを最適化して表面化学が異なる炭素試料を調製し、アクティブサイトを創製し新規ナノ炭素の調製を目指していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入装置の仕様調査に時間を要していたため。分析装置の購入を計画している。
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