研究課題/領域番号 |
21K14733
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
古郷 敦史 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (40747870)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ペロブスカイト太陽電池 |
研究実績の概要 |
無機ペロブスカイト化合物(CsPbI3)は、従来の有機無機ハイブリッドペロブスカイトと比べて、光や熱に対して分解されにくいといった特長があるため、高耐久太陽電池としての応用が期待されている。一方で、CsPbI3は相転移を起こすことが知られており、可視光吸収および光電変換特性を示すアルファ相は高温で安定なため、生成するためには350度程度の加熱処理を必要とし、フレキシブル太陽電池に応用できない。さらに、アルファ相のCsPbI3を常温で放置すると、可視光を吸収しないデルタ相に相転移してしまう。そのため、アルファ相を低温で製膜し、さらに常温での相転移を防ぐ技術が必要とされており、本研究では、CsPbI3にGeイオンを導入し、CsPb1-xGexI3ペロブスカイト結晶を生成した。まず、Geの導入量を検討したところ、Pbイオンに対して20%ほどドープした、CsPb0.8Ge0.2I3結晶は、90度程度の低温加熱によってアルファ相を生成することが分かった。さらに、アルファ相のCsPb0.8Ge0.2I3は窒素雰囲気下であれば常温で静置しても相転移を起こさず、可視光吸収を維持することもわかった。CsPb0.8Ge0.2I3ペロブスカイトを用いて太陽電池素子を作製し、光電変換特性を測定したところ約4%のエネルギー変換効率を示した。以上のようにして、CsPbI3にGeイオンをドーピングすることで、アルファ相の低温製膜を可能にし、常温での相転移を抑止できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CsPbI3にGeイオンを導入することで、アルファ相を安定化し、低温製膜可能かつ常温で相転移を起こさない無機ペロブスカイトの生成に成功した。さらに、作製したCsPb0.8Ge0.2I3は光電変換特性を示すことも明らかできたため、順調に研究が進捗したといえる。
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今後の研究の推進方策 |
CsPb0.8Ge0.2I3ペロブスカイトは相転移を起こさないものの、空気中の酸素によって分解されることが明らかになった。そのため、CsPb0.8Ge0.2I3を覆っている正孔輸送層を改善することでペロブスカイト太陽電池の耐久性を改善する。
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次年度使用額が生じた理由 |
スピンコーター、アルミブロックスターラーの購入費が少なく済み、コロナ禍で学会がオンラインになり、出張旅費が減ったため。 今後投稿する論文の英文校正費および投稿料に充てる予定である。また、国内外の学会参加費にも使用する予定である。
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