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2021 年度 実施状況報告書

ポリアジン共役構造体のバンドエンジニアリングと水分解電極触媒への応用

研究課題

研究課題/領域番号 21K14734
研究機関公益財団法人相模中央化学研究所

研究代表者

佐藤 宏亮  公益財団法人相模中央化学研究所, その他部局等, 研究員、博士研究員 (10815955)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2023-03-31
キーワード共有結合性有機骨格 / ネットワークポリマー / 2次元材料 / 電極触媒 / 分子設計 / ナノシート
研究実績の概要

【研究成果の具体的内容】本研究では、トリアジン環を中心とした共役骨格を合成・分析・評価し、主に(1)分子構造と集積構造の関係(2)分子設計によるバンド構造制御の可能性(3)分子構造と酸素還元電極触媒活性の関係、について調べた。(1)について、分子構造中に特定の組み合わせのリンカーユニットを用いることにより、乱層構造を有するトリアジン重合体を合成する設計を見出した。(2)について、分子内に適切にドナー性ユニットを組み込むことで、バンドギャップの狭小化ができることを確認した。(3)について、本研究において新規に合成したトリアジンネットワークポリマーは、電気化学的酸素還元反応を促進する電極材料として機能した。材料特性の位置づけとしては、現在までに報告されている構造が明確な有機材料として、過去最高性能に比肩するものであった。この成果は、本研究で提案している、トリアジン重合体の分子設計に基づいたバンドエンジニアリング・形態制御により電極触媒活性を向上させる、という戦略が有効であることを示すモデルケースであるといえる。
【研究成果の意義】系統的に合成したトリアジン重合体を比較することにより、電極触媒としての特性をを向上せしめるための指針を見出した。これは、近年その有用性が注目されている共有結合性有機骨格材料の応用展開の一端を担うものであり、意義があるといえる。研究成果を社会還元するため、研究の成果物の公表およびアウトリーチ活動を行った。2021年度中は、研究に関する学会発表および"トリアジン重合体担持カーボン触媒、およびそれを用いた触媒電極"として材料特許を出願した。
【研究成果の重要性】現在では、酸素還元電極触媒にはプラチナ等の貴金属が用いられている。省資源な有機材料でこれを代替するための研究は、持続可能社会の実現に向けて一層の加速が求められる研究であり、重要性は高い。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の研究計画に照らし、全体としては十分に進捗している。材料の詳細な分析や外部発表活動など、局所的には順調とは言えない評価軸こそあるものの、研究の中核となる材料の合成・評価は順調に進展し、当初計画以上の収穫が得られた。このため、全体としては順調に進行しているものと判断している。以下に詳細を記述する。
計画が極めて順調な部分について、(1)材料の分子設計についての理解(2)全有機電極触媒としての性能向上(3)材料の形態制御法の確立(4)材料のバンド構造のチューニング、といった研究の中心をなす成果を得ることができた。計画第1年度目の進捗としては、求められる水準を満足するものと言える。
一方、順調とは言えない部分について、主に(1)材料の詳細な分析(2)外部発表がある。(1)に関して、昨年度は外的要因による実験・測定にかかわる研究の停滞があった。具体的には、コロナウィルス感染防止対策による研究代表者・指導学生の研究所への入構制限、および大学共用設備の外部利用停止による測定・評価環境の悪化、の2点が原因として大きい。前者に関して、本研究では、不溶性の共役高分子材料の分子科学的な分析、およびナノ材料としての形態分析を両輪で行う必要がある。研究所内に設備がない測定(固体NMR・XPS・FE-SEMなど)に関しては提携大学の分析センターが所有しているものを利用する予定であったが、入構制限により予定していた時期に測定が行えなかった。(2)に関しては、前述したように高度分析機器による論文査読に耐えうるクオリティのデータ取得が遅れたことが主因である。加えて、所属機関の方針として外部発表より先に特許化を求められたことにより、優先順位を落とさざるを得なかったことによる。

今後の研究の推進方策

【今後の研究の推進方策について】前年度同様、分子設計-合成-評価のサイクルを重ねることで、高い特性を有する材料を開発する。計画第1年度目において得られた指針を基に、材料の平面性を維持しつつより電子豊富なヘテロ環を導入したトリアジン重合体の合成を計画している。並行して、材料の電子物性・形態と電極触媒特性の関係について、蓄積されつつあるデータをもとに考察し、より洗練された設計指針を見出す。これらの方策により、一層研究が進展することが期待される。
【研究計画の変更】当初計画していたバンド構造制御に加えて、材料の集積構造・ナノ構造が、電極材料としての特性に多大な影響を及ぼすことが分かった。より特性の高い材料を見出すため、集積構造の制御や2次元材料化などナノ材料としての分析・検討を増やすことを予定している。
【研究遂行の課題】計画第1年度目では、(1)材料の詳細な分析(2)外部発表の遅れが課題であった。(1)については、直近では大学の入構制限が解除される方向に向かっているため、昨年度合成した材料に関し、詳細な電子顕微鏡観察や原子間力顕微鏡による分析を進めることで、遅れを取り戻す。また、計画初年度は信頼できる外部分析機関の選定・一見での利用手続きなどに時間コストがかかった。本年度からはこのイニシャルコストが掛からないため、分析を加速できるものと見込んでいる。(2)に関して、外部発表の障壁になっていた特許化については手続きが完了したため、今後は積極的な発信を行う予定としている。具体的には、論文2本の投稿および複数回の学会発表を計画している。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022 2021

すべて 学会発表 (1件) 産業財産権 (1件)

  • [学会発表] トリアジン重合体の合成と酸素還元電極触媒への応用2021

    • 著者名/発表者名
      長田和,佐藤宏亮,毛塚智子,相原秀典
    • 学会等名
      日本化学会秋季事業 第11回 CSJ化学フェスタ2021
  • [産業財産権] トリアジン重合体担持カーボン触媒、およびそれを用いた触媒電極2022

    • 発明者名
      佐藤宏亮,相原秀典
    • 権利者名
      佐藤宏亮,相原秀典
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      220201-277

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公開日: 2022-12-28  

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