Spy0128はNTDとCTDの2ドメインからなる蛋白質であり、各ドメインに1つずつイソペプチド結合が存在する。NTDのN末端のβストランドをNP、NPを除去したNTDをNTDΔ、CTDのC末端のβストランドをCP、NPを除去したNTDをCTDΔと呼ぶことにする。Spy0128をNTD-CTDと表記することにすると、NPとNTDΔ-CTD、CPとNTD-CTDΔはそれぞれ自発的にイソペプチド結合を形成することが明らかにされている。一方で、NTDΔ-CTDΔはCPとは反応しないことがわかっており、ドメイン間の相互作用が反応性を制御していると推測される。そこで、NP-CTDΔ、CP-NTDΔに対して適切な開始剤を与えることで、イソペプチド結合の形成を通じた一方向的なフォールディングを促し、結果としてリビング重合が可能となるのではないかと考えた。 前年度までに、NP-CTDΔ、CP-NTDΔが、意外なことに開始剤なしでも互いに反応し、重合性を示すことが分かった。単独では重合性はないことから、交互共重合体の形成が示唆された。最終年度では、NP-CTDΔとNTDΔは反応するが、CP-NTDΔとCTDΔは反応しないことが示された。すなわち、CTDΔはNPとNTDΔの結合により活性化することを示唆しており、目的通りの設計が得られた。今後、NTDΔについても同様の性質を持たせることで、リビング重合を達成することができる。 また、迅速かつ高効率な蛋白質発現を可能とするブレビバチルス発現系の改良に取り組んだ。前年度では、96ウェルプレートの培養容器としての利用と、培地へのアルギニン塩酸塩とプロリンの添加により、従来発現困難とされていた各種蛋白質の分泌発現に成功した。本年度は、上記で設計した蛋白質が本発現系を用いて大量に取得できることを示し、迅速な分子設計と解析が可能となった。
|