研究実績の概要 |
我々ヒトを含む多細胞生物は, 食物など外部から得られたエネルギーを細胞間で伝達することで各細胞(筋細胞, 神経細胞 etc.)の活動に必要なエネルギーを供給し, 細胞の集合体である個体としての活動を維持している. これまで長い間, 細胞間で伝達されるエネルギー物質はグルコースだとされてきた. しかしながら, 「生物の主要な細胞間エネルギー伝達物質はグルコースではなく乳酸である」というこれまでのmetabolismの常識を覆す説が近年提唱されている. この「非常識」を検証するには細胞間の素早い乳酸動態を直接観察する必要があり, そのためには細胞外の乳酸を高時間分解能で観察可能なセンサーが必要である. これまでの研究で, 研究代表者はタンパク質工学の手法を駆使して世界初となる細胞外乳酸蛍光センサーeLACCO1及び第二世代センサーeLACCO2の開発に成功した. eLACCO1及びeLACCO2は細胞外乳酸を高感度で可視化することに成功したが, 乳酸応答速度が遅く細胞間の素早い乳酸濃度変化を追うことが困難であった. そこで本研究では, 乳酸応答の速度が早い第三世代細胞外乳酸蛍光センサーeLACCO3の開発を目的とする. これまでの蛍光センサー開発で培ったタンパク質工学技術を駆使して第三世代蛍光乳酸センサーのプロトタイプを開発することに本年度は成功した. また, eLACCO1の論文発表を行った(Nasu et al. Nature Communications, 12, 7058).
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