研究課題/領域番号 |
21K14749
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岡村 秀紀 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (60832293)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 光化学 / 分子内環化反応 / 生体内合成化学 |
研究実績の概要 |
生物活性物質の活性を時空間制御できる光分子操作技術は、様々な生命現象の解明や高精度な治療に有用な方法論として大きな注目を集めている。しかし、生体応用可能な光化学反応はごく限られており、多種多様な化合物の光制御を実現するためには新規光化学反応の開発が必要不可欠である。そこで本研究では、化合物の生体内構築を可能とする新規光環化反応の開発を目指した。 2021年度は、光感受性オキシムを用いた新規光環化反応の反応条件と基質適用範囲の検証および反応機構の解明を研究した。種々の基質を化学合成し、近可視光照射による環化反応の進行をHPLC及びNMRを用いて検証したところ、本反応は様々な置換基を有する含窒素芳香族化合物を良好な収率で与えることを見出した。また、本反応は有機溶媒中に限らず含水溶媒中で進行することも確認し、生体応用可能性を見出すことができた。さらに、反応の副生成物を単離・構造解析することにより、新規光反応のメカニズムもおおよそ明らかにすることもできた。 加えて、細胞内における光反応を検証するために必要な実験系の立ち上げも行った。光環化後に蛍光性の含窒素芳香環を与える化合物を細胞内に導入後、光照射を行い、蛍光顕微鏡を用いて蛍光シグナルの発現を観察した。その結果、光非照射群では蛍光シグナルが観察されなかったのに対し、光を照射した場合には蛍光シグナルが観察された。以上の結果より、本光環化反応は細胞内で進行することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2021年度に予定していた研究計画をほぼ完遂し、2022年度に予定していた細胞内光化学反応を前倒しで検証することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に基づいて、細胞内における光反応の検証を進める。光反応後に薬理活性を示す化合物の合成と細胞レベルにおける機能評価を行い、本光反応の生体内光分子操作技術における有用性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会のオンライン開催に伴い、出張費がかからなかったため。2022年度に計画している合成実験や物性評価、および細胞実験に充てる予定である。
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