生体内で産生される代謝物は疾病と関連する診断マーカーとして機能するため、医学研究分野を中心に注目が集まっている。本研究では、そうした代謝物を統一的、かつ超高感度に定量可能とする新規方法論の確立を目指した。具体的には、代謝物の構造情報をDNAの配列情報へ置き換えうるシステムを新たに設計し、定量PCRや次世代シーケンサーにより置き換えたDNAを超高感度に定量する試みとなる。代謝物の種類、及び量をコードした多成分のDNA配列を一斉定量することで、多種類の代謝物を超高感度定量が可能か検証する。 本年度は、チオール代謝物の中でもグルタチオンに着目し、DNAへの置き換えが可能かどうか検証を進めた。具体的には、磁性ビーズに担持したDNAがグルタチオンとの反応に伴い遊離するかを検証した。まず、サンプル中に含まれるグルタチオン量に応じて、ビーズからDNAが遊離することをqPCRを用いて明らかにした。次に、本方法論に基づき、細胞抽出液中に含まれるグルタチオンの定量にも成功した。DNAに置き換えることを可能とする本方法論は、トランスクプリトームとの同時解析も期待される。実際に、本方法論で細胞抽出液を用い、酸化ストレスストレスマーカーの一つであるHO-1の発現レベルとグルタチオン量の変動をモニターが可能であることを明らかにした。上記の内容について、現在論文投稿中である。さらに、現在、グルタチオン以外の代謝物への応用に向け、検証を進めており、がんのエネルギー代謝で重要な役割を果たすグルコース、及び乳酸のDNAコード化の可能性を新たに見出している。
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