今年度は、高CO2環境下で炭水化物の過剰な蓄積がGDPDの発現に起因するものなのか検討した。 高CO2処理によるイネGDPD遺伝子の発現解析をRT-qPCR法で調べた結果GDPD2と3の遺伝子の発現は処理7時間13.5時間後ともに主に葉身で上昇し、葉身の無機リン酸の含量は高CO2処理で低下した。さらにイネ葉身のGDPD活性を測定したところ13.5時間の高CO2処理で葉身のGDPD活性は有意に上昇した。これは高CO2環境で引き起こされたリン酸含量の低下がGDPD2と3の発現誘導および活性化に関与することを示唆する。 GDPD2と3の細胞内局在性を調べるためにGDPDのトランジット配列にGFPを連結した融合タンパク質をタマネギ表皮細胞で発現させ観察した。その結果、それらの融合タンパク質はプラスチドに局在するコントロール融合タンパク質の発現場所と一致することが分かった。これらの結果はGDPD2と3が光合成などのプラスチド機能に関わっていることを示唆する。 高CO2処理による葉身の炭水化物や糖リンさんの含量を測定したところ、炭水化物は高CO2処理で上昇するが、炭水化物生成の中間体である糖リンさんの含量は有意に低下した。一方、GDPDの生成物であるGlycerol-3-phosphate(G3P)を葉身の先端から添加し、10時間後葉身の炭水化物の含量を測定した結果G3Pの処理によって炭水化物が上昇した。これらの結果は高CO2処理による糖リンさんの供給量の増加がリン欠乏を引き起こし、GDPD遺伝子の発現や活性を誘導することを示唆する。さらにG3P処理による炭水化物の増加はG3Pが炭水化物の蓄積に直接関与することを支持する結果である。
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