研究課題/領域番号 |
21K14763
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
番場 大 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (70898288)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ミヤコグサ / QTL解析 / メタゲノム / 微生物群集 / 植物-微生物相互作用 |
研究実績の概要 |
近年,持続可能な農業の確立が世界的な課題となっている中で,植物と土壌微生物群集の相互作用は,低環境負荷農業を実現する極めて重要な役割を担うと期待されている。そこで本研究では,植物と土壌微生物群集の相互作用に関連する遺伝子座を特定し,微生物群集との相互作用が植物によってどのように規定されるのかを明らかにすることを目的とし,マメ科のモデル植物ミヤコグサを用いて,土壌微生物群集の接種実験,メタゲノム解析,およびQTL解析を組み合わせることで,植物-土壌微生物群集の相互作用機構について,アプローチする。 2021年度は,ミヤコグサGifu系統とLotus burttii系統との間に作成された組み換え自殖系統 (RILs)と東北大学圃場の土壌より抽出した微生物群集の相互作用を調査した。使用した植物は93RIL+親の95系統,375個体を成育させ,形成された根内生菌群集を検出した。本実験では,およそ14000の異なる配列(ASV)が検出され,そのうち実験区などの効果を受けておらず,かつ植物10系統以上から検出された4883ASVsに着目し,QTL解析を行った。その結果, 35ASVsがRIL間で生じる遺伝多型との間に有意に相関がみられた (LODスコア > 7 & P value < 0.05)。そして,これら35ASVsのうち33ASVsがミヤコグサ染色体2番の一部の領域との関連が認められた。また,関連が認められたASVs同士の頻度を比較した結果,14の相関グループが確認された。この結果はミヤコグサの一部の染色体領域が根内生菌群集に強い効果を持っているものの,その効果は菌株間で一様ではないことを示している。今回の結果は,植物の種内レベルの遺伝子型の違いは内生菌群集を有意に変化させるものの,その効果量は常に小さいという,複数の先行研究で報告されている現象を説明する可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画では,2021年度はミヤコグサRIL系統の種子確保から始まるものであったが,研究室内で保持されている種子が利用可能であったことから,当初の計画を前倒してミヤコグサRIL系統と微生物群集の接種実験を行い,根内生菌群集に関連するQTL解析を行うことができた。一方で,微生物群集が植物の生育に与える効果を調査するための非接種実験が,人工気象機の故障により行うことができなかった。これらを鑑みて,本研究課題はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
現在までにミヤコグサGifu系統とLotus burttiiの間に作出されたRIL系統を用いた接種実験,メタゲノム解析,QTL解析を行うことができた。2022年度以降はミヤコグサGifu系統とMG20系統の間に作出されたRIL系統を用い,昨年度に発見された傾向が親系統にどれだけ依存的なのかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルスにより学会集会等がオンライン開催となったため,計上していた旅費を繰り越すこととなった。また,同様にコロナウィルスにより学生アルバイトを雇うことがかなわず,人件費についても来年度に繰り越すこととなった。 一方で,2021年度に実験遂行に必須な人工気象機が破損したため,新調するために今回の繰り越し資金も加えて使用する可能性がある。
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