近年,持続可能な農業の確立が世界的な課題となっている中で,植物と土壌微生物群集の相互作用は低環境負荷農業を実現する極めて重要な役割を担うと期待されている。そこで,本研究では,植物と土壌微生物群集の相互作用に関連する植物遺伝子座を特定し,微生物群集との相互作用が植物によってどのように規定されるのかを明らかにすることを目的とし,マメ科のモデル植物ミヤコグサを用いて,土壌微生物群集の接種実験,メタゲノム解析,およびQTL解析を組み合わせ,植物-土壌微生物群集の相互作用機構についてアプローチした。 本研究ではミヤコグサGifu系統とLotus burttii系統,Gifu系統とMG20系統との間に作出された2種類のRILを用いた接種実験を行い,最終的に194RIL系統と3親系統703個体の根微生物群集の情報を得た。Gifu-MG20 RILsにおいてはRhizobialesとBurkholderialesに属する20のASVが両親種の遺伝的多型と有意な関連を示した。また,Gifu-BurttiiにおいてもRhizobialesとBurkholderialesを含む42のASVとの有意な関連が検出された。これらのことから,従来より根圏で植物と密接な関係を築いている報告があるRhizobialesなどは,植物種内や近縁種間に生じる遺伝的な違いに対して,感受性高く反応していることが示唆される。また有意な関連が観察されたASVにおいては,複数の分類群にまたがるASVsが同じ遺伝子座と関連していることが示され,植物の遺伝的多型に伴った共通のパスウェイが複数の細菌に同様の効果をもたらす可能性が示唆される。
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