研究課題/領域番号 |
21K14766
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高木 俊幸 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (00814526)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | サンゴ / 褐虫藻 / ホロビオント / カロテノイド生産菌 / ゼアキサンチン / FISH解析 |
研究実績の概要 |
本研究では褐虫藻-カロテノイド生産菌を中心にサンゴホロビオントにおける生物間相互作用をマルチオミクス解析により明らかにし、カロテノイド生産菌が褐虫藻のROS産生を軽減する機構を全容解明する。本年度は、まずサンゴと共生する主要な褐虫藻であるCladocopiumおよびDurusdiniumの継続的な培養を開始し、カロテノイド生産菌の分離培養を試みた。Cladocopiumからはオレンジ色を呈するコロニーを形成するフラボバクテリウム科細菌C-2466株を発見した。有機溶媒を用いて色素を抽出後、逆相TLC分析を実施したところ、C-2466株はゼアキサンチンを含む複数のカロテノイドを合成することが明らかになった。これまでに本研究者らが褐虫藻から発見しているフラボバクテリウム科細菌GF1株(Motone et al. mBio 2020)よりも色素量が多かったことから、褐虫藻の環境ストレスを緩和する有望な菌株となる。さらにDNAプローブを用いたFluorescence in situ hybridization(FISH解析)を行ったところ、C-2466株はCladocopiumの細胞表面に局在していることを確認した。抗生物質による無菌化を試みたCladocopiumにおいても、C-2466株の残存が確認されたことから、CladocopiumとC-2466株は強力な共生関係を構築していると考えられた。C-2466株から高品質なゲノム抽出に成功し、次世代シーケンサーによるシーケンシング解析を実施することができたため、ゲノム科学的な手法も用いて、褐虫藻-細菌の相互作用メカニズムを解明していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究対象生物であるCladocopiumおよびDurusdiniumの継続的な培養を開始し、Cladocopiumからは新しいカロテノイド生産菌の分離培養に成功した。本菌については、無菌化を試みているCladocopiumおよびDurusdiniumへの感染実験も検討している。C-2466株以外にも、共同研究者から候補となるカロテノイド生産菌の供与を受けることができたため、次年度はCladocopiumおよびDurusdiniumへのカロテノイド生産菌の感染実験を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
CladocopiumおよびDurusdiniumの無菌化試験を継続して実施する。また、褐虫藻への感染実験に用いる細菌については、研究協力者と共同で生産する全カロテノイドを同定する。褐虫藻の環境ストレスを緩和する細菌については、ゲノム解読を実施した後にRNA-Seq解析等によって褐虫藻との共生メカニズムを明らかにしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
サンゴを採捕するための出張が困難であったため、サンゴ生体を用いる実験については次年度に延期した。
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