研究課題/領域番号 |
21K14767
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岩間 亮 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (90793042)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Aspergillus nidulans / 生体膜 / リン脂質 / オルガネラ |
研究実績の概要 |
糸状菌Aspergillus nidulansの様々な培養段階に対して、リピドーム解析を実施するための条件を検討し、現在までに、細胞形態が大きく異なる分生子、液体培養した菌糸体、プレート培養した菌体を対象に解析を確立した。それぞれの細胞形態で、リン脂質頭部、尾部いずれにも違いがあることが示唆されてきた。現在、これらの違いを体系的に整理することを試みている。また、A. nidulansだけでなく、特に産業上有用なAspergillus oryzaeとの違いについても解析しており、単位質量あたりの膜脂質量が異なるなどの結果も得られ始めている。 糸状菌のメンブレンコンタクトサイト形成因子については、まずモデル生物Saccharomyces cerevisiaeで既知となっている因子のホモログをA. nidulansで破壊し、その表現型を解析した。ミトコンドリアと小胞体とのコンタクトサイト形成に関わる因子の破壊株は生育欠損を示し、小胞体と細胞膜とのコンタクトサイト形成に関わる一部の因子の破壊株についても顕著な生育欠損が見られた。これら破壊株を液体培養で培養した場合におけるリピドーム解析を実施したところ、いずれの破壊株においても、ホスファチジルエタノールアミンの量が減少し、ホスファチジルイノシトールの量が増加する同様の傾向が見られた。糸状菌細胞においても、小胞体やミトコンドリアは細胞全体にネットワーク状に存在することから、これらのオルガネラが糸状菌細胞におけるリン脂質バランスの制御に大きく関わることは想定されるが、それぞれのメンブレンコンタクトサイトの破壊が同様の表現型を示す理由を解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メンブレンコンタクトサイト形成に関わる因子の破壊株の作製にやや遅れが見られるが、一部の破壊株については作製でき、そのリン脂質解析も進んでいる。糸状菌の培養様式の違いによるリン脂質の差も見られ始めており、研究計画全体としては順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
糸状菌の産業上有用な培養法として、小麦ふすま等を用いた固体培養法があるが、現在までにその培養法における定量的なリン脂質解析が確立できていないため、その確立を目指す。現在までに得られているデータとともに、糸状菌の培養方法や細胞形態と構成リン脂質の違いを体系的に整理し、産業上有用な特性とリン脂質組成における相関関係を明らかにする。 体系的に整理した相関関係の中で、各々のオルガネラコンタクトサイトがどのような役割を果たすのかについて、破壊株を通した解析から明らかにする。
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