本研究では分裂酵母における新規な寿命制御因子であるNnk1タンパク質の機能解析を行なった。まず手始めにNnk1タンパク質が細胞内で機能する場所を特定するために、Nnk1タンパク質のC末端にGFPタグを融合し、その局在について蛍光顕微鏡観察を行なった。その結果、Nnk1-GFPタンパク質は主に細胞の隔壁・細胞膜・成長端に局在していることが明らかになった。この局在様式は細胞壁の合成や適切な細胞成長に寄与するタンパク質の局在と類似していたため、Nnk1タンパク質も同様の機能を持つか解析を行なった。まず、Nnk1の活性が低下した変異株に対して細胞壁合成の阻害剤を作用させたところ、この変異株は阻害剤に対して著しい感受性を示した。さらに野生株においてはこの阻害剤を作用させるとNnk1タンパク質自身がリン酸化され、さらにNnk1タンパク質の活性が細胞壁ストレス応答に重要な役割を持つPmk1 MAPKの活性化に重要であることが明らかになった。また細胞壁ストレスが存在しない条件下でも、Nnk1タンパク質の活性が低下するとPmk1 MAPKの活性も低下したことから、Nnk1タンパク質は基底レベルでのPmk1 MAPKの活性維持に重要であることが判明した。以前の申請者らの研究から、弱い細胞壁ストレスが分裂酵母の経時寿命を延長し、さらにPmk1の欠損変異株が長寿命の表現型を示すことが明らかになっているため、このNnk1の機能が寿命制御に寄与していることが考えられた。以上より、本研究によってNnk1タンパク質の新たな生理学的機能が明らかになった。
|