研究課題/領域番号 |
21K14771
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
佐藤 悠 山口大学, 大学院創成科学研究科, 助教(テニュアトラック) (90852187)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | リボソームRNA / 増殖速度 / バクテリア / プラスミド / 微生物操作技術 |
研究実績の概要 |
これまでに天然環境からさまざまな性質を有する原核生物が単離され、工業、医療、食品製造、水処理などの幅広い分野にて利用されてきた。一方、ユニークな性質を持ちながらも、増殖の遅さがネックとなり研究・開発を断念せざるを得ない微生物群が多々存在する。そのため、新たな産業応用の原石となる微生物を発掘するためには、原核生物の増殖速度を加速させる技術の開発が不可欠であり、本研究課題では微生物の増殖速度の制御が可能であるかどうかを検証する。 環境微生物の増殖速度に関する1つの事実として、「タンパク質合成の翻訳機構に関与するリボソームRNA(rRNA)遺伝子をより多く有する種ほど増殖が速い傾向にある」。本知見より更に一歩踏み込み、rRNA遺伝子の発現量を人為的に改変させ、微生物の増殖速度への影響評価を行う。一般的な原核生物はゲノム上に複数コピーのrRNA遺伝子を持ち、種によってゲノム上の遺伝子の位置が異なる。また、全てのコピー間で塩基配列が同一でない場合があり、rRNA ごとに性質が同一でない可能性がある。上記の2つの問題により、一般的な原核生物を利用した検証は困難である。そこで本研究ではプラスミド上にのみ1種類のrRNA遺伝子を有する属細菌を利用し、そのコピー数を変化させることで問題の解決を試みた。当該年度は細菌の培養条件の最適化、有効な抗生物質マーカーの選抜、形質転換用のプラスミド構築を完了し、形質転換法を確立した。現在、同時並行にてError prone PCR法により推定複製領域に該当する部位に変異を導入した変異ライブラリーを構築している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、昨年度使用したAureimonas属細菌とは異なる「プラスミド上にのみリボソームRNA遺伝子群を有する細菌」を利用した。感受性のある薬剤を探索し、本薬剤への耐性を賦与する遺伝子をマーカーとして、大腸菌とのシャトルベクターを構築した。構築したプラスミドを用いて、電気穿孔法により本菌株の形質転換体の取得に成功し、再現性も得ている。
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今後の研究の推進方策 |
上述のプラスミド上にある推定の複製開始領域に無作為な変異を導入し、再度形質転換体の取得を進めている。すでに数コロニーではあるが形質転換体を取得しており、これらの形質転換体の増殖速度を算出する。また、各増殖フェーズにおけるリボソームRNA遺伝子のコピー数や、リボソームRNAの転写量を測定する。本研究により、増殖速度とリボソームRNA遺伝子のコピー数との関係を1個体レベルで解明する。
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