研究課題
肥満を抑制する低カロリー油脂やバイオ燃料の原料として期待され、今後さらなる需要拡大が見込まれる中鎖脂肪酸を含むMCTオイルについて、優れた油脂生産能力を持つ海洋性の微生物であるオーランチオキトリウム属による効率的な発酵生産系の構築を目的としている。今年度は、炭素数16の脂肪酸を主に生成するオーランチオキトリウム属由来の脂肪酸合成酵素への変異導入により、生成脂肪酸の炭素鎖長の改変を試みた。酵母や植物由来の脂肪酸合成酵素において、生成脂肪酸鎖長の決定に関与していることが予測されているドメインの立体構造情報を鋳型としたホモロジーモデリングにより、オーランチオキトリウム属由来の脂肪酸合成酵素における同ドメインの立体構造を予測した。その結果、他生物種由来の脂肪酸合成酵素の生成脂肪酸鎖長の決定に重要であることが推定されているアミノ酸残基が、オーランチオキトリウム属由来の脂肪酸合成酵素においても同様の働きを持つことが予測された。また、オーランチオキトリウム属のゲノム中から脂肪酸合成酵素の遺伝子を単離し、各標的アミノ酸残基をアラニンに変異させた変異型脂肪酸合成酵素の遺伝子を作成した。変異型脂肪酸合成酵素の遺伝子をオーランチオキトリウム属由来の伸長因子α1遺伝子プロモーター制御下においた発現プラスミドを作成した。また、生成した中鎖脂肪酸の分離検出条件を検討し、ガスクロマトグラフィーによる分析法を決定した。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた、オーランチオキトリウム属由来の脂肪酸合成酵素中の変異導入標的の探索と変異型酵素の遺伝子が取得は想定通りに進捗しており、中鎖脂肪酸の分析方法についても検討できたため。
今年度作成した変異型脂肪酸合成酵素をオーランチオキトリウム属に導入した遺伝子組換株を樹立し、生成脂肪酸の解析を行う。また、脂肪酸合成酵素が合成した脂肪酸を同酵素から遊離するチオエステラーゼについても生成脂肪酸の種類に影響を与える可能性があるため、オーランチオキトリウム属よりチオエステラーゼ遺伝子を単離して、脂肪酸鎖長に対する特異性を解析する。
参加予定としていた学会の多くがオンライン開催となり、旅費が発生しなかった。また、購入予定としていた機器(微量遠心分離機等)が半導体不足の影響を受けて納期未定であったため購入を見送った。研究速度のスピードアップのため、DNA塩基配列決定等の各種分析の外部委託を予定しており、その費用として使用する。研究成果をまとめた論文については高インパクトを狙い、オープンアクセス誌への投稿を検討しており、その投稿費用として使用する。
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Journal of Bioscience and Bioengineering
巻: 133 ページ: 405~413
10.1016/j.jbiosc.2022.02.001
巻: 131 ページ: 373~380
10.1016/j.jbiosc.2020.11.013