海洋性の真核微生物ラビリンチュラ類Aurantiochytrium属の脂肪酸合成系および脂肪酸分解系の代謝改変により、食品、医療、燃料分野をはじめとする幅広い産業分野で有用な炭素鎖長8-12の中鎖脂肪酸の生産を試みた。独自に設定したガスクロマトグラフィーによる中鎖脂肪酸の分析条件を用いて、Aurantiochytirum limacinum SR21株の脂肪酸プロファイルを解析したところ、蓄積された脂肪酸の炭素鎖長は13以上であった。同属微生物のゲノム情報中より見つかった、脂肪酸のβ酸化に関連する酵素、アシルCoAオキシダーゼをコードすると予測された3つの遺伝子を、独自に確立したAurantiochytirum属におけるCRISPR-Cas9システムにより破壊したところ、細胞中の脂肪酸含有量の変化は認められた一方で、脂肪酸組成には顕著な変化がなく、これらのアシルCoAオキシダーゼは脂肪酸の炭素鎖長に対する特異性は有さないことが考えられた。一方で、A. limacinum SR21株のゲノム中にコードされている46個のチオエステラーゼ様遺伝子について、他生物種のチオエステラーゼとの配列比較によって分類を行ったところ、大腸菌において中鎖脂肪酸を遊離させることが報告されているTesBと高いアミノ酸相同性を有するタンパク質をコードした遺伝子を発見し、同遺伝子の改変が脂肪酸組成に与える影響について引き続き解析している。
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