研究課題
Clostridium saccharoperbutylacetonicum N1-4の芽胞形成についてTEMによる細胞構造の変化の解析を進めてきた。前年度観測された高温(37℃)培養の細胞における細胞膜が細胞壁から剥離するような異常構造は、アデニン存在下においては緩和される傾向がえられた。このため、この異常構造は熱ストレスで発生する芽胞形成(発芽能のない芽胞)に関与している可能性が考えられる。一方、塩やpH、酸素といった熱以外のストレス条件下で培養した細胞においてはこの様な異常構造は観察されず、熱ストレス特異的な事象であることが確認された。また、これらストレスにおいては、熱ストレス下でのアデニン補給が発揮するような細胞増殖とブタノール発酵の促進作用がないことからも、本株におけるストレスとアデニンの関係は熱ストレス特異的である可能性が示唆された。また、他種発酵性の微生物としてグラム陽性細菌に乳酸菌、グラム陰性細菌に酢酸菌、真核生物に酵母からそれぞれ代表菌種複数株を用いて、アデニンにより熱ストレス耐性が付与されるかを検討した。最適温度での培養時と比べ最大菌体密度が50%以下となる温度を高温条件と定義し試験した結果、Clostridium属細菌と同様にグラム陽性の乳酸菌においてのみ細胞増殖が回復する傾向が得られた。しかし、C. saccharoperbutylacetonicumとは異なり高温条件下での乳酸発酵能の改善はみられなかった。このため、グラム陽性細菌においてはアデニンが熱ストレス条件下における細胞壁生合成系に寄与することで、ストレスによる細胞異常を緩和している可能性が考えられる。
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Journal of Bioscience and Bioengineering
巻: 136 ページ: 198-204
10.1016/j.jbiosc.2023.07.003