研究実績の概要 |
メタノールおよびグリセロールを同時に資化可能なM. extorquens代謝改変株の構築を行った。M. extorquens野生株に対してputative glycerol kinase(Mext_4066) をプラスミドを利用して過剰発現させることで、グリセロール単一炭素源での増殖を確認した。続いてゲノム上に同遺伝子を組み込んだ株を構築し、同様の培地での培養を行ったが、細胞増殖速度は野生株と同程度であった。このことからグリセロールの効率的な資化にはMext_4066をプラスミドにより高発現させる必要があることが示唆された。また、メタノール由来の炭素を目的生産物に効率的に利用するため、競合反応を触媒する酵素であるギ酸デヒドロゲナーゼ(FDH)の破壊を行った。接合伝達大腸菌を用いたM. extorquensの遺伝子破壊の操作において、メタノール培地での培養を行うステップがあるが、本研究ではメタノール資化経路の破壊を行うため、別の原理によるスクリーニング法の開発が必要となる。そこで抗生物質耐性を利用した新たな遺伝子破壊操作プロトコルを確立した。この遺伝子破壊プロトコルを用いて、4つのFDH遺伝子(Mext_4582,Mext_0389, Mext_4405-4406, Mext_2105)を破壊した4重破壊株の作成に成功した。4重破壊株ではメタノール含有培地での培養において培地中にギ酸の蓄積が確認されたことから、ギ酸デヒドロゲナーゼ活性が完全に喪失していることが示唆された。しかしながら、ギ酸の蓄積により増殖阻害が引き起こされ、メタノールを物質生産に利用する際はギ酸代謝の改善が必要であることが示唆された。
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