研究課題/領域番号 |
21K14785
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
松田 真弥 筑波大学, 生命環境系, 特任助教 (40805488)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | CDK / TOR / cyclin / オートファジー / 減数分裂 / アクチン |
研究実績の概要 |
減数分裂は、次世代へ遺伝情報を継承するための特殊な細胞分裂様式である。多細胞生物においては、減数分裂は生殖細胞形成時のみに現れる現象であるため、その制御を担うシグナル伝達系の解明は非常に困難である。一方で、単細胞性の真核生物である分裂酵母は栄養飢餓などにより接合し、速やかに減数分裂を開始する。また、温度シフトにより減数分裂を誘導できる温度感受性変異株などを用いることで、減数分裂の制御に関わる遺伝子を同定することが可能である。このような分裂酵母の性質に着目し、減数分裂の新たな制御因子として哺乳類CDK5オルソルグであるPef1を見出した。また、遺伝学、生化学、細胞生物学的な解析により、Pef1がTarget of rapamycin complex1 (TORC1)を活性化し、減数分裂の開始・進行を制御することを明らかにした。しかしながら、Pef1の基質は未だ同定されておらず、どのようなシグナル伝達経路を介してTORC1の活性を調節し、減数分裂を制御しているのかは未だ不明である。そこで本研究課題では、Pef1の基質を同定し、Pef1 / TORC1間シグナル伝達経路の実態を明らかにする。本年度は、 リン酸化プロテオミクス解析により同定されたPef1の基質候補を大腸菌で発現させ、組換えタンパク質の獲得を試みた。基質候補全てを大腸菌で発現・精製するには至っていないが、獲得できた基質候補について現在in vitro kinase assayの準備を進めている。また、アクチン重合阻害剤Latrunculin Aを用いた実験により、Pef1がアクチン骨格制御系に関与することが示唆された。分裂酵母の胞子形成にアクチンが重要な役割を担うことが先行研究で示されており、Pef1とアクチンの関係性を精緻に解析することで、Pef1による減数分裂制御機構の解明に繋がる新たな知見が得られると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では、本年度にPef1の基質候補の組換えタンパク質を獲得し、in vitro kinase assayによりPef1の基質候補を絞り込む予定であった。しかしながら、大腸菌でのタンパク質発現や精製条件が難航し、基質候補全ての組換えタンパク質獲得には至っていない。一方で、pef1欠損株を用いた解析からPef1とアクチン細胞骨格制御系との繋がりを示唆する発見があり、この発見が本研究課題を推進する新たな起爆剤として期待される。
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今後の研究の推進方策 |
1. Pef1の基質候補についてin vitro kinase assayを行い、リン酸化の有無を確かめる。Pef1によってリン酸化されたタンパク質が見つかれば、次にin vivoでPef1によってリン酸化されるか検証する。Pef1の基質が同定できれば、そのリン酸化部位を特定し、点突然変異導入による擬似リン酸化によって基質の細胞内局在や活性の変化等について解析を行う。 2.生化学・細胞生物学的解析により Pef1がアクチン動態を制御するか検証する。特に減数分裂期においてPef1とアクチン細胞骨格制御系がどのように相互作用するか重点的に解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は所属を筑波大学へ移したため、購入予定であった消耗品および機器の種類を変更して少額で済んだ。また、異動時期と学会の会期が重なったため、当初参加予定であった学会への現地参加を見送ることにした。上記2つの理由により、物品品および旅費に関して次年度使用額が生じた。次年度への繰り越し分は、研究成果発表のための費費に充てる予定である。
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