減数分裂は、生物の遺伝情報に多様性をもたらす重要な分裂様式である。その最大の特徴は、染色体の相同組換えにより異性の遺伝子と混ざり合うことであり、これにより次世代に多様な遺伝的特徴が継承され、環境変化への対応や進化を可能にしている。分裂酵母において減数分裂の新たな制御因子として見出されたPef1は、サイクリン依存性キナーゼファミリーに属するSer/Thrキナーゼであるが、Pef1に関する研究報告は極めて少なく、特に下流シグナル伝達経路には不明な点が多く残されている。そこで本研究では、プロテオミクス解析により同定されたPef1の基質候補の中から真の基質を明らかにし、Pef1による減数分裂制御機構の解明を目指した。昨年度までに、大腸菌を用いた組換えタンパク質合成系を構築し、in vitroでリン酸化実験を行う準備を進めてきた。本年度は、大腸菌で発現できた基質候補について抗リン酸化抗体を用いたin vitro kinase assayを行い、Pef1によるリン酸化の有無を検証した。その結果、Pef1によってリン酸化される基質を1つ見出すことができた。今後、リン酸化部位を同定するとともに、そのリン酸化の生理的意義について解析を進める。また、Pef1に結合するサイクリンは3種類同定されているが、これらのサイクリンがどのような仕組みでPef1と複合体を形成するのかは不明である。そこで、サイクリンによるPef1の活性化機構の解析に着手した。まず、大腸菌を用いた組換えタンパク質合成系を利用してStrepタグを融合したサイクリンとGSTタグを融合したPef1を合成し、これらのタンパク質を試験管内で混合することでPef1-サイクリン複合体を調整することに成功した。今後、Pef1とサイクリンの結合に重要なアミノ酸残基や、基質特異性などを明らかにしていきたい。
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