研究実績の概要 |
本年度の研究では、微小管重合阻害剤であるthiabendazole (TBZ)および微小管安定化剤であるnordihydroguaiaretic acid (NDGA)を出芽酵母に添加し、ミトコンドリアの融合・分裂異常に関わる遺伝子をreverse transcription PCR (RT-PCR)を用いて特定した。これまでの研究より、GFP株を用いて細胞内でのミトコンドリアと微小化の局在を観察した結果、TBZ添加細胞においては点状のミトコンドリアが観察され、微小管の伸長阻害も確認された。NDGA添加細胞においては、ミトコンドリアおよび微小管共にcontrol細胞と同様の局在が見られた。これらの結果をふまえ、ミトコンドリアの融合・分裂に関わる遺伝子において、RT-PCRを用いてTBZ, NDGA添加細胞における発現量を調べたところ、ミトコンドリアの分裂に関与するDNM1, FIS1においてはTBZ, NDGA添加細胞においてcontrol細胞と比較して転写量の変化は見られなかったが、融合に関与する遺伝子の1つであるMGM1においてはTBZ添加細胞において転写量の減少が観察された。ミトコンドリアの融合が阻害されるとミトコンドリアは分断され、点状の形態を示すことから顕微鏡観察の結果とも一致することがわかった。また、蛍光顕微鏡観察の結果、TBZ, NDGA添加細胞において、contol細胞よりもミトコンドリアのGFP蛍光輝度が高く観察されたため、RT-PCRを用いて発現量を調べたところ、control細胞と比較してTBZ添加細胞においてわずかであるがミトコンドリア関与遺伝子の転写量の増加が確認された。
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