研究課題/領域番号 |
21K14788
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
藤 佑志郎 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 特別研究員 (90847815)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | フェニルエタノイド配糖体 / アクテオシド / 生合成経路 / ゴマ / バイオ生産 |
研究実績の概要 |
フェニルエタノイド配糖体は,C6-C2のグルコース配糖体を基本骨格とした化合物の総称であり,代表的なフェニルエタノイド配糖体であるActeosideは多くの薬用植物中に存在し,様々な薬理作用を示すことから,医薬品としての利用が期待されている.しかし,多くの薬用植物中で微量であり,特異的な構造のため化学合成も難しく,生合成機構の詳細も不明であることから,未だ量産化が確立できていない.先行研究にてフェニルエタノイド配糖体(主成分:Acteoside)を優先的に生産するゴマ培養細胞株や,ストレス誘導によるアクテオシド量のみを有意に増加させる発現系を確立した.また,トランスクリプトーム解析により,フェニルエタノイド配糖体の骨格形成に重要な配糖体化やアシル化に関わる酵素の候補遺伝子を絞り込むことができた. そこで本年度は,Acteosideの骨格形成に重要なUDP-グルコース転移酵素(UGT)の候補遺伝子6つ(SiUGT1-6)をクローニングし,大腸菌を宿主とした組み換え酵素を調製し,in vitroアッセイにより,C6-C2 (TyrosolやHydroxytyrosol)への配糖体化活性をスクリーニングした.その結果,SiUGT1から6にC6-C2に対するUGT活性が確認された.さらにHydroxytyrosolとの反応生成物を分取,精製し,NMR分析にかけたところ,反応生成物は直鎖の水酸基にグルコースが付加したHydroxytyrosol 1-O-glucosideであることが分かった.また,クローニングした酵素の内SiUGT1と2はHydroxytyrosolに対して18.6と9.5 nkat/mgと高い活性を示した.一方でSiUGT1-6はC6-C2にのみ活性を示し,フェニルプロパノイド類のCaffeic acidやp-Coumaric acidへの活性は確認できなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナウィルス感染拡大により,予定していた栽培試験が行えず,RNA-seq解析のためのサンプル採取ができなかったが,予定していたアクテオシドの骨格形成に重要なUGT候補遺伝子のクローニングや機能解析を行うことができた.そのためおおむね順調に進展している.さらに栽培試験が行えなかったことで,次年度解析予定だったアシル化転移酵素のクローニングを前倒しで行えたことから機能解析を速やかに開始することができる.
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今後の研究の推進方策 |
トランスクリプトーム解析より,アクテオシドの骨格形成に重要な酵素の候補遺伝子(UGT, URT, AT)を絞り込むことができたことから,候補遺伝子より発現した酵素の機能を明示する必要がある.本年度は配糖体化酵素の候補遺伝子の活性を明らかにした.次年度はアシル化転移酵素やUDP-ラムノース転移酵素の候補遺伝子を大腸菌または酵母へ導入し,候補酵素をクローニング後,機能解析を行う.それぞれにおいて生成物の構造を確認し,最終的にアクテオシドを生産できるか検討する.また可能ならば,酵素阻害剤や他の成分(特に葉中に存在する成分)によるアクテオシド生成促進または抑制効果についても検討する.これらを通じて,アクテオシドの効率的バイオ生産に関する基礎的知見を得るとともにその生産基盤の確立を目指す.さらに,本年度できなかった栽培試験も行い,ゴマ植物体におけるアクテオシド生合成遺伝子の発現変動解析や代謝物の蓄積パターンを解析し,アクテオシド高生産にはどの生合成遺伝子が大きく寄与しているのか,器官別で使い分けされているのかなど明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染拡大により,予定していた栽培試験を行えず,RNA-seq解析のためのサンプル採取ができなかった.そのためRNA-seq解析のために計上していた分(50万円)を次年度に繰り越した.
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